フランス人が花を贈る目的は日本と全然違う 5月初めは街中がすずらんで溢れる「愛の日」

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フランスでは個人から個人へ花を贈り合う習慣がある(写真:atoaya / PIXTA)
“ミュゲの日にすずらんをもらうと幸せが訪れる、というんだ。でも、あげた本人もその場で幸せになるんだよ。相手にふりかけると自分にもお裾わけが降ってくる、香水と同じさ”
                  〜オリヴィエ フローリスト(花屋さん)経営

 

5月1日はメーデーでした。アメリカ起源の労働者団結の日といわれますが、ヨーロッパ各地では夏が来たことを皆で喜ぶ日といっていいでしょう。

5月1日のフランスは、”すずらん”を贈り合う日

フランスはミュゲ(muguet)の日です。パリではフラワーショップに限らず、街の辻々に「ミュゲはいかが」と即席の花屋さんが現れて花を売り、愛する人や親しい人々がミュゲを贈り合います。

ミュゲとは、すずらんのこと。鈴のような白い花で香り高く新しい季節の訪れを告げます。愛の花ともいわれ、花嫁に贈る花になっています。ミュゲの日の由来となったのは、中世ヴァロア朝のシャルル9世(1550〜1574)のある逸話。シャルル9世はこの愛の花が大のお気に入りで、5月1日に美しい女性からミュゲを贈られたことに有頂天となって、その幸せを分けてあげようと宮中の女性すべてにミュゲを大盤振舞いしたといいます。

そして19世紀になると、5月1日は愛の日となり、国中の人々がミュゲの贈答をするようになりました。「この日だけは誰でもミュゲを売っていい」とのお触れが出たのです。花屋のすぐ隣ではダメとか、根が付いていてもいけないとか、いくらかの条件はありますが、子どもたちは森に行ってミュゲを掘り、根を切りブーケをつくって、街角でお小遣いを稼ぎます。メーデーの日、お店はお休みですが、国中の至るところでミュゲが売られ、町中が――飾りっ気のないメトロの中でさえ――可憐な香りで彩られます。

フランスで花を贈り合うのはミュゲの日だけではありません。日本では5月の第2日曜日が母の日。フランスでも5月最終日曜日の母の日(La fête des Mères)にはママンに花を贈ります。

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