フランス人が花を贈る目的は日本と全然違う

5月初めは街中がすずらんで溢れる「愛の日」

ただ、贈るのは日本でおなじみのカーネーションではありません。カーネーションは日持ちするため、お墓にお供えする花の定番であるせいもあるでしょう。となると、世代を問わずに人気のバラや旬のすずらんに、ママンの好きな芍薬あるいはユリといったものを、ブーケに拵(あつら)えて贈るのです。それだけではなく、ふだんは仕事と家事で大忙しのママンを慮って、子どもたちだけで作ったお料理をプレゼントする家庭もあります。

パリの街にはお花屋さんが沢山あります。気軽にお花を贈る文化が根付いているのでしょう。誕生日などの人生の記念日、バレンタインデー、食事に招かれたとき。恋人との仲直りの際にもお花は力強い味方となります。レストランで食事をしていると“薔薇売りのおじさん”もやってきます。

過日、南仏にアロマスパの取材に行ったときには、ホテルから「お疲れでしょう」と、いま咲きのラベンダーと土地のハーブの花束をいただきました。この粋なプレゼントに、ドライフラワーにして持ち帰りました。フランスでは、まさに隙あらば花を贈るのです。

日本では、元来花は神前や仏前を飾るものでした。仏教では仏像や仏堂を飾ることを荘厳(しょうごん)といいます。荘厳の婆娑羅から立花が生まれ、わび茶の花から、日常を飾る花が生まれました。

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室内に活けるようになる前、花は身を飾るもので、髪や衣服に挿して用いました。それが女性のかんざしになっていったのです。今の季節なら、早乙女も流鏑馬の若武者も、髪には菖蒲ですね。朝摘みの花と番茶を頭上の藤の箕(み)に載せて、「花いりまへんか」と京の町を流し歩いた白川女(しらかわめ)の姿も、日本人の生活の中に花が溶け込んでいたことの表れでしょうね。

現代の日本で、花束からイメージされるのは卒業式、送別会、発表会などのイベントです。フランスではそもそも卒業式がありませんし、会社主催の送別会といったものも聞いたことがありませんので、そこで花を贈ることもありません。つまり、お花はあくまで個人から個人へのプレゼントとなのです。

日本人も、日常的にフラワーパフォーマンスを

お花を贈り合う習慣はいいですね。花は、視覚だけでなく嗅覚を動かし、それだけでなく聴覚も味覚も触覚だってエンジンがかかって、カラダ全部が敏感になります。ご存じのとおり、花は種子植物の生殖器官です。花を手にして感覚がドライブし、カラダがセンシュアルになるのは、ある意味当然のことなんですね。

日本の男性が花束を抱えて……あるいは薔薇を一輪持って、電車に乗るのは勇気がいることでしょうか? 

女性も、お庭でガーデニングも悪くはありませんが、愛する人のためにもっとお花を贈って、彼の粋ゴコロを揺さぶりましょう。日本でも、フランスのようにフローラル・パフォーマンスがさらに深く浸透していけばいいなと、私はいつも思っているのです。

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