フランス人が大統領選前に「焦り始めた」ワケ

フェイスブックには悲鳴のような投稿が…

そのせいか、今回の結果が発表された後、二日酔いのような不快感を募らせたのは私だけではなかったようだ。Facebookなどを開けば、友人たちの「悲鳴の嵐」が吹き荒れている。勝ち残った2人の候補者はフランス人の半数の支持を得ているはずなのに、不思議な光景である。

実は、フランスでは2002年にも、今回と同じようなことが起こった。2回目の決戦投票で、マリーヌ・ルペン氏の父、極右のジャン=マリー・ル・ペンとジャック・シラク氏の対戦になった。そのとき、極右が選ばれるのを恐れたフランス国民の大半がパニックになって、全国で反乱が起き、最終的にシラク氏が圧倒的な勝利を収めたのだ。

多くが「仕方なく」マクロンに投票した

デジャビュな気持ちはそのエピソードで終わらない。

2012年のニコラ・サルコジ氏vs.オランド氏の対戦。過激な政治手法からかなり国民から不評だったサルコジを倒すために、私を含め、多くのフランス人が、仕方なく、オランド氏に投票した。大統領になってまもなく、オランド氏には「フランビー(Flamby)」というあだ名がつけられた。フランビーとは、フランスで有名なプリンのメーカーで、日本でいうプッチンプリンのような商品だ。まるでプリンのように、カリスマのない弱いキャラクターという意味があった。それほど、最初から評判がいま一つだった。

今、この「仕方なく」選んだことが問題だったと痛感している。最近フランスでは、政治信念より、恐怖が動機で投票することが多くなっている。意見が合う候補者ではなく、ある候補者が嫌だから、戦略的に好きでもない人を選んでしまう。

たとえば、知人はフィヨン氏が嫌いだった。なぜなら、フィヨン氏がフランス人の会社員の定年を引き上げようとしたからだ。もうすぐ定年だったその知人にとってフィヨン氏は嫌な候補者だった。その結果、マクロン氏を選んだ。「マクロンのどこがいいの?」と聞いたら、「まー、別に好きでもないが、フィヨンが落選してホッとしたよ!」と話していた。

別の友人も「とにかく1回目でフィヨン対ルペンになっていたら最悪だから、マクロンにした。ギリギリまで悩んだけど、マクロンは失業手当の期間を長くすると言ってるから、まあいいんじゃない」と語る。

マクロンを選んだ人の中には、彼の若さに希望を持った人や、左翼でも右翼でもない中立的な姿勢に安心した人もいたようだ。そして、左翼を代表していた候補者のブノワ・アモン氏の支持者の何割かが、世論調査の悪い数字を見て不安になり、選挙直前にマクロンに乗り換えたそうだ。とにかく、マクロンは「まだマシ」とたくさんの支持を得た。

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