オリンパスと大王製紙はどこまで復活したか 信用を大きく失墜させた、あの2社の業績は?

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ですから、金利水準が2~3%まで上昇してきたら、営業利益の水準にもよりますが、経常利益が消えてしまう可能性があるのです。今は、低金利に助けられて何とか収益を確保しているということです。

また、中長期的な安全性を示す「自己資本比率」も、16.4%と高い水準ではありません。この指標は一般的に、固定資産の多い会社は20%以上、流動資産の多い会社でも15%以上あるかが安全かどうかの基準になりますから、大王製紙の中長期的な財務安定性はそれほど高くないということです。当然ですが、金利が上昇してきたら、安全性が急速に損なわれる恐れがあるのです。

中国経済の減速で、ますます紙市況がだぶつく恐れも

もう一つ、大王製紙には中国経済の減速という懸念材料があります。

中国は、紙や鉄などにおいて過大なキャパシティを持っている国です。さらに同国は、政治不安を安定させるために雇用を維持しなければなりませんから、供給過剰であったとしても紙や鉄などを作り続けます。そして、国内で消化できない分は世界中に商品が流れていきますから、中国が不景気になると世界中の紙や鉄の市況が緩んでいくのです。

中国にとって一番守りたいものは「共産党一党独裁体制」ですから、世界の市況など知ったことではありません。国内の雇用を安定させるためなら、世界の市況が緩もうと作り続けるのです。

今、中国経済がシャドーバンキングの問題で金融を引き締めざるを得ない状況になっていますから、今後は成長率が鈍化してくる可能性があります。すると、先ほどの理屈から中国国内で供給過剰が起こり、その余剰分が世界に流れて市況が緩む恐れがあるのです。

これから先の大王製紙の業績は、金利の動向と中国経済の状況、それに伴う紙市況の動向に左右されると考えられます。しばらくは日本国内の景気が拡大していくでしょうから、短期的には売上高が増加するかもしれませんが、中長期的にはそれほど楽な状況でないことには変わりありません。

小宮 一慶 経営コンサルタント

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こみやかずよし / Kazuyoshi Komiya

小宮コンサルタンツ代表取締役CEO。大企業から中小企業まで、企業規模や業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、講演や新聞・雑誌の執筆、テレビ出演も行う。著書に『「なれる最高の自分」になる方法』『ビジネスマンのための「習慣力」養成講座』(ともにディスカヴァー・トゥエンティワン)、『小宮一慶の「日経新聞」深読み講座』(日本経済新聞出版社)、『株式投資で勝つための指標が1冊でわかる本』(PHPビジネス新書)など。

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