私は当時、このような悪質行為をしたオリンパスは絶対に上場廃止にすべきだと主張していましたが、東京証券取引所は「粉飾がなかったとしても、債務超過ではなかった」「赤字を黒字に見せるなどの売上高や営業利益の操作はしていない」「全社的な粉飾ではなかった」などの筋の通らない理由を並べて、上場廃止にしませんでした。
当時は民主党が政権を握っており、株価も低迷していた時期でしたから、もしオリンパスを上場廃止にしたならば、当然、投資家たちは損をします。東京証券取引所はそれを恐れて上場廃止にしなかったのではないかと思いますが、いずれにしてもこの決断は市場の信認を大きく傷つけました。証券取引所の判断としては、非常にまずかったと私は思います。
このような悪質なケースでは、いったん上場廃止にして、身ぎれいになって、それで再度上場基準に達したら、新たに審査して上場させるべきだったでしょう。それくらいのことをしないと、同じようなことが再発する可能性があるのです。証券取引所は、粉飾をした個別の会社やその株主を守るのが使命ではなく、市場の信用を守るのが最大の使命であるはずだと思いますが、東証はそのような判断をしなかったのです。今でもとても残念です。市場を守る立場にある東証内部で、そのときにどのような議論がなされたのかを知りたいものです。
不祥事から2年、オリンパスの業績はどうなったか
この不祥事から約2年、ようやく当時の社長らの有罪判決が出ました。この問題で信用を大きく失ったオリンパスの経営は今、どうなっているのでしょうか。
まずは、収益性を調べるために損益計算書を見ていきます。前々期である12年3月期(平成24年3月期)の「売上高」は8485億円、「営業利益」は355億円という、まずまずの状況でした。ただ、「特別損失」が合計で276億円計上されていたことから、最終的には489億円の純損失となってしまったのです。(同社の12年3月期の決算短信13ページを参照)
翌年の13年3月期(平成25年3月期)は、「売上高」は7438億円まで大きく落ち込みましたが、「売上原価」や「販売費及び一般管理費」を削減したことで、「営業利益」は前年とほぼ同じ350億円を確保しました。さらに「減損損失」が158億円から76億円まで減ったことで、最終的には80億円の純利益を確保することができました。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら