日本の「健康ブーム」が、実は本物でない理由 「東京マラソン」も「皇居ラン」も大盛況だが…

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私はスポーツ庁による2016年度の「スポーツの実施状況等に関する世論調査」の検討チームにも参加している。メンバーとして、この調査にかかわる機会をいただいたこともあり、最近、スポーツ実施率を高めるためにオフィスである試みを始めた。私のデスクの後ろにある打ち合わせ用のテーブルといすの位置を少しずらし、空いたスペースにストレッチマット、ダンベルを6人分ほど置き、社内にいる日は毎日、昼休みにストレッチや簡単な筋トレを始めてみたのだ。

スポーツ政策やスポーツビジネスにかかわる者として、まずは自分のデスクの周りから変えていこう! そんな意気込みで始めた取り組みだ。

自ら「昼休みに運動」を始めてはみたが…

ところが、始めてから2カ月以上経つが、始めてすぐにオフィスで同じ「島」の若手、Y君(男性)が仲間に加わっただけ。それ以降はまったく参加の輪が広がる気配がないのだ。

Y君はボルダリングをやっているし、私もほぼ毎日、出社前にジムでトレーニングをしている。つまり、そもそもスポーツに意欲的で、すでにやっている人はやるけれど、やらない人は、目の前にストレッチマットとダンベルを置いたぐらいでは、まず手を出さないのである。

ちなみに、Y君のほかに私の近くにデスクがあるSさん、Cさん、Kさんは、いずれも子育て世代の女性だ。夕方には子どものお迎えに行かなければならないので、昼休みもストレッチや筋トレなどやっている場合ではないのだろう。

まさに、スポーツ庁の調査結果に見る「20~40代の仕事や家事で忙しくて運動やスポーツができない女性」そのものだ。

「職場で空いた時間に軽い運動を――」。このような呼びかけや取り組みを積み重ねても、それだけではスポーツ実施率は決して65%にはならない。そう強く実感してしまい、私はちょっとした敗北感を味わっている。

さて、ここからが本題だ。もちろん運動やスポーツが嫌いな人もいるが、「適度な運動やスポーツは、やらないよりはやったほうがよい」ということに対して、真っ向から否定する人はそう多くはないだろう。

高齢化が避けられないこれからの時代、健康・長寿や社会保障費の削減に運動やスポーツが少なからず貢献できることは確かだ。では、スポーツ実施率を大きく高めるには、どうすればよいか。

1961年にスポーツ振興法が制定されて以降、国はさまざまな施策を展開し、20%台だったスポーツ実施率をもう少しで50%に届くところまで引き上げてきた。

その間、公共スポーツ施設 は1万0193(1969年)から5万2719(2015年)に増え、1971年に養成を開始したスポーツ指導員 は現在49万7345人に達し、地域のスポーツクラブ は541クラブ(2002年)から3550クラブ(2015年)に増えた。この半世紀、人(指導者)、場所(施設)、組織(クラブ)のような基本的な環境整備を着実に推し進め、スポーツ実施率を徐々に引き上げてきた。

しかし、先にも述べたように、ここにきてスポーツ実施率が頭打ちか、むしろ低下しているのが現状なのである。

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