日本の「健康ブーム」が、実は本物でない理由 「東京マラソン」も「皇居ラン」も大盛況だが…

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

この壁を破り、スポーツ実施率を20%以上も押し上げようと思えば、スポーツに関する環境整備だけではなく、社会の構造やライフスタイルが変わるような、大きな変革が必要だ。

スポーツ環境だけでなく、「働き方」の問題も大きい

たとえば、働き方改革。その1つの取り組みが「テレワーク」(ICT〈情報通信技術〉などを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方)だが、テレワークの普及により、在宅勤務や自宅近くのサテライトオフィスでの勤務が定着したら、どうだろう。

通勤にかかっていた時間や満員電車のストレスから解放され、その分、スポーツに気持ちが向かうかもしれない。

NHK放送文化研究所が実施した2015年の「国民生活時間調査」によると、東京圏 の有職者の通勤時間は1時間42分。1カ月(20日勤務)に換算すると、34時間だ。テレワークの普及で通勤時間が短縮されれば、スポーツに限らず、さまざまな面で効果をもたらすだろう。

一方で、同調査によると、人口が「30万以上の市」では、通勤時間は1時間9分と、東京圏の約3分の2だ。東京一極集中が解消され、街や都市の構造そのものが変われば、時間創出の効果はより大きくなる。

たとえば、三菱総合研究所が毎月発表するマンスリーレビュー(2015年5月号)でも紹介してきたが、宮崎市では、空港と市内が特急で10分足らずという利便性を生かし、ICT産業の集積による「職住近接都市」を目指している。

デパートが撤退した店舗跡地に大手パソコンメーカーのサポートセンターが入居したことをきっかけに、その後、3年間でIT産業従事者が1700人増加した。中には、ウェブ会議システムを活用して、東京の大企業に付加価値の高いサービスを提供するITベンチャーもある。

そして、宮崎には、職住近接に加えて、アウトドア近接という強みもあり、朝はサーフィンを楽しんでから出社し、昼間は集中力を高めてバリバリ働くという地方ならではの働き方・暮らし方を実現している人もいる。

東京一極集中が解消され、都市やまちの構造が変わり、そして、人々のライフスタイルが変わる。スポーツ実施率が65%を超え、健康長寿や活力ある高齢化社会を実現するには、そのような大きな変革が必要となるだろう。

横田 匡俊 日本体育大学 スポーツマネジメント学部 准教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

よこた まさとし / Masatoshi Yokota

1975年栃木県生まれ。早稲田大学スポーツ科学部・助手、三菱総合研究所(スポーツ事業リーダー)を経て現職。三菱総合研究所では、スポーツを通した地域活性化、スタジアム・アリーナの収支試算、トップアスリートのタレント発掘、オリンピック・パラリンピック関連調査等、スポーツビジネス、スポーツ政策に関する多岐に渡る業務を担当。著書に『オリンピック・レガシー 2020年東京をこう変える!』(共著、ポプラ社)、『奇跡の3年 2019・2020・2021 ゴールデン・スポーツイヤーズが地方を変える』(共著、徳間書店)など。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事