木本:われわれのコンビ名の「TKO」、この言葉自体には著作権はないんですよね。
稲穂:「TKO」はアルファベット3文字ですから著作物ではないでしょう。もし何らかの形で保護したいのであれば商標登録はできるかもしれません。
ちょっと調べてみたのですが、日立製作所が「電球類及び照明用器具」などを指定商品として「TKO」を商標登録していますし、小林織ネームという会社が「失禁用おしめ」「紙製幼児用おしめ」「クッション、座布団、まくら、マットレス」などで登録しています。「TKO」というコンビ名を名乗ること自体に問題はありませんが、木本さんが「TKO」の文字をこれらの商品につけて販売すると、商標権侵害となってしまいます。
木本:へえ、「TKO」で商標登録されているものもあるんですね。すでに解散していますが、「オノヨーコ」というコンビがいました。僕はビートルズが好きなので、「お前ら何てコンビ名つけてんねん」と言っていたのです。「オノヨーコ」という名乗りは問題ないんですか。
稲穂:基本的には問題ないと思います。メンバーの小野島さんと横田さんの苗字の2文字を組み合わせただけですし、「オノ・ヨーコ」という名前の方も世の中にはたくさんいらっしゃるでしょうから。
木本:つけても自由なんですね。確実にあのオノ・ヨーコさんを意識してつけていたんですが。
稲穂:気をつけなければいけないのは、有名人の持つ「パブリシティ権」でしょうか。パブリシティ権というのは、「オノ・ヨーコ」さんのような有名人が自分の名前や肖像が持つ顧客吸引力でお金儲けをすることができる権利です。ですから、無関係の第三者が「オノ・ヨーコ」さんの名前や肖像を使って販促などに利用すると、パブリシティ権を侵害しているとして「オノ・ヨーコ」さんから警告が来る可能性はあります。
知財への意識の高まりと理解度のギャップ
木本:チョップリンとか、お笑いのコンビ名にはそういうパロディ的な名前はたくさんあります。
稲穂:皆さん、そのあたりは少し神経質になりすぎだと思います。あまり深く考えないで「やばそう」だと即断してしまうところがある。コンビ名にしても、似たものがあるとか、誰かが文句を言ってくるのではないかと萎縮してはいませんか? 明らかに法的・モラル的に問題になりそうな場合は自粛したほうがよいですが、そうではなさそうなケースもいっぱいあります。
木本:敏感になりすぎだと。
稲穂:『楽しく学べる「知財」入門』を書いた動機として、皆さんの知財に関する「意識」は高くなりましたが、「理解」は深まっていないと感じていたことがあります。知的財産についてはいろいろなニュースが日々報道されます。ですが、一つひとつの個別の事例にスポットライトが当たることはありますが、断片的な報道になりがちです。そのうえ情報が限られているので全体像をつかめないことも多い。
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