稲穂:一方、キャラクターの絵柄は美術の著作物として保護されると考えられていて、実際に著作権侵害が認められています。ですから、ファービーについても最初に漫画やアニメがあって、そのあとに人形が作られていたのであれば海賊品が著作権侵害と判断されたかもしれません。
木本:ということは、もちろんドラえもんには著作権があるということですよね。
ドラえもんの「設定」はパクリOK
稲穂:実はちょっと複雑です。ドラえもんというキャラクター自体に著作権があるわけではなくて、漫画やアニメの絵柄が著作権で保護されることになります。まるまるコピーをすれば、もちろん侵害ですし、ちょっと違っていても一見してドラえもんとわかるものは侵害となるでしょう。でも、火を見て逃げ出すとか、どら焼きが好きだとか、ネズミが嫌いという設定は保護されません。誰かが漫画を描いて、もともとは耳があったけど食べられたという設定のキャラクターを登場させても、それだけでは著作権侵害にはなりません。ドラえもんの絵柄の本質的な特徴が感じられるかどうかがポイントです。
木本:僕、大阪でムーミンのパクリを見ました。Tシャツの絵なんですが、ムーミンが自分の体に布団をかけて寝そべっていて、目には白布がかかっていて、そっくりの字体で「エーミン」って書いてありました。こんなの絶対ヤバいでしょう?
稲穂:(画像を見て)これは微妙ですね。布団と白布で体や顔の大部分が隠れているからです。ただのカバと言い逃れできるかもしれません。裁判になったとしたら、ムーミンの絵柄の本質的な特徴を感じられるかどうかがポイントとなるでしょうね。
木本:聞けば聞くほどアバウトな線引きに思えてきました。
稲穂:一応基準はあるのですが、結局のところ、ケース・バイ・ケースです。著作権だけではなく、特許権の場合でもそれは同じです。たとえば、特許が認められた装置があって、その特許の権利範囲を定めた文章どおりの装置を他人が無断で作ったら特許権の侵害ですが、言葉を1つずつ当てはめていって、ちょっとした差異があった場合は、必ずしも侵害とは言い切れません。
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