稲穂:知的財産権は主に5つあります。発明に関する「特許権」、物品の形状や構造などの考案に関する「実用新案権」、物品のデザインに関する「意匠権」、商品やサービスにつける営業標識に関する「商標権」、そして、小説・絵画・音楽などの著作物に関する「著作権」です。それぞれ保護対象や保護期間が異なります。最初の4つは特許庁に出願してお墨付きを得られたものが権利になります。
著作権は著作物を創作したのと同時に権利が発生します。先ほど、ものすごく短いフレーズには権利が発生しないと言いましたが、一般的なあいさつ文をつなげて長い文章を作っても、やはりありふれた表現にすぎませんから、著作物とはいえません。その一方で、俳句や短歌は短い文章ではあるものの、創作的な表現がなされているという理由から著作物性はあるとされています。なお、著作権は独自の創作について発生する権利なので、どんなに似通っていても、他人が独自に創作した著作物に対してはその効力は及びません。
「ファイト一発」を独占できるか?
木本:大正製薬が「リポビタンD」のCMで使用している「ファイト一発」には著作権があるんでしょうか。
稲穂:先ほどと同じ理由で、おそらく著作権はないと思いますが、「ファイト一発」に関しては商標権がありますので、その点には注意が必要です。「ファイト一発」については、「文字の商標」に加えて「音の商標」も認められています。もっとも、商標はあくまでも商品やサービスの営業標識、いわゆる目印ですから、木本さんが、特定の商品やサービスとは無関係な文脈で「ファイト一発」と叫んでも、商標権の侵害とはなりません。
木本:「お~いお茶」も「音の商標」として登録商標になっていると先生の本にありましたが、どこかの紅茶を宣伝するために私が「お~い紅茶」と言った場合も権利の侵害になるんですか?
稲穂:「お~いお茶」の「音の商標」は、「茶」などを指定商品として登録されています。商標は指定された商品・サービスとセットで登録されます。この場合、商品は互いに類似しますので、商標が互いに類似しているかどうかが問題となります。類似するのならば侵害です。実は、「音の商標」については、登録できる制度が始まって間もないこともあり、実際に争われた事例がなく、どのような場合に権利侵害となるのか、裁判所の判断基準がまだはっきりしません。文字の場合は「見た目」と「読み方」と「意味合い」が似ているかで判断されます。
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