結果を出す人は「1人で100点」を目指さない 慕われるリーダーがこっそりしていること

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ANAの先輩たちは、後輩から教えてもらうことを恥ずかしがりません。30年以上客室センターに在籍するCAで、ANAビジネスソリューション研修事業部長の石山由美香は「実際、フライトのときは後輩のCAに教えてもらってばかり」だと言います。

「もちろん、先輩にあたるCAは、後輩CAたちの手本であるべきです。だからといって知らないことを聞いたり、助けてもらったりするのが恥ずかしいことだと思っている人はいません。管理する立場になると乗務する回数は減っていきます。もちろん事前に十分な勉強をしたうえで臨みますが、入国の際の法律や検疫については、情報がどんどん変わります。あるいは、機内のオーディオのリモコンも、機種によっては使った経験がない場合もあります。ですので、後輩に教えてもらうのはごく日常的なことなのです」

ANAのパイロットたちの間でよく言われる〝 Experience can help others 〞という標語があります。これは、「あなたの経験が、ほかの人を助けます(だから、経験をどんどん共有しましょう)」という意味です。

勤続 20年以上のパイロットで、ボーイング767の機長、猿棒正芳は、「パイロットが操縦技術を向上させるためには、ほかのパイロットが経験した話を、いかにたくさん、いろんなバリエーションで知っているかがとても重要」と話します。経験が多いほど、判断の精度が高まるからです。

「『経験値が高い人』という言い方をよくしますが、すべてを自分が経験しておくのは、パイロットの場合不可能です。状況は千差万別なので、まったく同じ飛行条件は二度とありません。だから、『他人の経験』を教えてもらう必要が出てきます。経験をシェアするときには、先輩、後輩の上下関係はありません」

自分が経験したことがない天候、空港、トラブルなど、「こんなときはこんなふうに解決したよ」という他人の経験を知っておけば、いざ実際の運航の場面で同じような状況に置かれた場合でも「想定内」のこととして対応できます。

的確な判断を要求されるパイロットにとっては、その数は多ければ多いほどいい。だから、ANAの機長は後輩からも貪欲に学ぶのです。

後輩が寄ってくる人を目指せ

後輩から学ぶことがいいとわかっていても、なかなかアドバイスはもらいづらいという声をよく聞きます。その理由はシンプルで、後輩が上下関係に遠慮して、本音を言ってくれないからです。

後輩の心を開き、よいアドバイスをもらうコツは、ズバリ質問の仕方にあります。20年以上客室センターに在籍するCAで、ANAビジネスソリューション接遇マナー講師の申紅徳は、後輩の本音を引き出す方法について次のように語ります。

「後輩にとっては、私たちは目上の人間。気をつかってなかなかネガティブなコメントはしてくれません。それでもフィードバックをもらいたいときは、『選択肢を示して聞く』のがコツです」

次ページ「ダメな聞き方」と「よい聞き方」の具体例
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