「修羅場」に放り込むと人は劇的に伸びる ANA社員の「思い切って任せる」仕組み
後輩が自ら成長していくのを促す最も効果的な方法、それは「任せる」ことです。最初は失敗しても、とにかくやらせてみる。すると、人は自然にできるようになるのです。
しかし、後輩に「任せる」ほうがいいとわかっていても、何でも自分でやってしまう癖が抜けない人が多いのも事実です。
「まだ一人前じゃないから」
「自分がやったほうが早いから」
「新人を現場に出して、お客様からクレームが来てしまったら困るから」
このような言い訳をして、後輩に任せることを拒んでいないでしょうか? でも、先輩が「まだそのときじゃない」と言い続けて仕事を抱え込んでいるかぎり、後輩はいつまでも、1ランク上の仕事を経験することができません。結果的に人材が育たず、管理職の仕事は減らず……会社全体にとっても、大きなマイナスとなります。
フライトの最初から最後まで、機長に「なりきる」
ANAでは、こうした個人的な感情によって後輩の成長の機会が妨げられないよう、いくつかの仕組みを設けています。
パイロットは、たいてい機長が1人と、副操縦士が1人(フライトによっては2人)、操縦室に乗り込んで運航にあたります。機長は操縦室だけでなく、客室を含め、そのフライトすべてに責任をもちます。その機長を補佐するのが副操縦士です。勤続20年以上のパイロットで、ボーイング767の機長、猿棒正芳は、次のように話します。
「手術をする若い医師も、教科書で読んだ知識だけでは技術は身に付かないのではないでしょうか。自分で執刀して、経験を積まなければいけない。副操縦士も、機長のコマンド(命令)する姿を見ているだけでは機長としての力を養えません」