TSUTAYAが不振出版社を買い続ける狙い 徳間書店の買収で目指すは書店の「ユニクロ」
これらの書店のほとんどはCCCの直営ではなく、FC加盟企業による経営だ。そもそも増田氏は自社の業態を「書店チェーン」とも「CD・DVDレンタルチェーン」とも思っていない。毎日の生活を楽しめる商品やサービスを提案する「企画会社」というのが自らの定義だ。
そして最終顧客である一般消費者にライフスタイルを提案するためには、まず直接の顧客であるFC企業に「店舗パッケージ」を提案し、採用してもらう必要がある。
2011年以降に増えている「蔦屋書店」はまだ直営店が多いが、これはFC展開の雛形となるマザー店舗という位置づけだ。蔦屋書店には、国内外の雑誌をバックナンバー含め大規模に展開する「マガジンストリート」を設置したり、書籍を持ち込んで長居できる居心地のよい飲食店を併設したりしている。
この形態は増田氏が2000年代半ばに米国を視察した際、アマゾンの急成長による書店チェーンの衰退を目の当たりにし、「アマゾンにはできないことをやらなければ生き残れない」と考えた結果だ。
銀座で明らかになる買収子会社の「使い道」
この「アマゾンにできないこと」を模索する流れに、徳間書店の買収もある。恐らく増田氏の頭の中には、単にオリジナル商品を開発させるにとどまらないアイデアがあるはずだ。そのモデルケースがこの4月、東京・銀座にお目見えする。
4月20日にオープンする大型商業ビル「GINZA SIX」に、蔦屋書店初となるアートをテーマにした店舗を開設する。詳細はまだ公開されていないが、和の美を表現した空間で世界中から集めたアート関連書籍を販売するほか、イベントスペースで実際のアートのオークションも展開することになるようだ。
この国内最大規模となるアート専門書店を企画するうえで活躍したのが、CCCが2015年8月に傘下に収めた美術出版社だ。経営破綻し民事再生手続き中だった同社の再生スポンサーとなることで、グループ企業とした。
美術出版社はアート専門の月刊誌『美術手帖』が看板媒体。開業に向けて、アーティストやアート作品市場に詳しい編集部がオリジナルのムックなどを編集・出版したほか、グループ内コンサル的な立場で店舗開発そのものにも知見を提供しているという。
この事例が一定の成功を収めれば、徳間書店の知見を生かしたアニメ特化の店舗なども早晩登場するだろう。
徳間書店のように債務超過までに至らずとも、経営不振の出版社は少なくない。今後もCCCが経営に行き詰まった出版社を買収し、商品と店舗の開発リソースとして役立てる可能性は十分にある。5年後の出版・書店の勢力図は、CCCを台風の目として様変わりするかもしれない。
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