TSUTAYAが不振出版社を買い続ける狙い 徳間書店の買収で目指すは書店の「ユニクロ」
当時社長だった創業者の徳間康快氏(2000年に死去)は、既存の出版ビジネスの枠に飽き足らない大胆な試みをする経営者として知られており、同様に創業経営者である増田氏とは通じ合うところがあったようだ。
増田氏のCCCが資本業務提携から子会社化へと徳間書店への関与を深めた背景の一つには、ディレクTVという挑戦をともにしてくれた徳間氏への恩義を込め、救済したという側面もあるだろう。
だがそれを上回るのは、増田氏の強烈な危機感だ。
いまや書店最大手に
3月31日、東京都内のホテルで開かれたCCCの社員ミーティング。グループ傘下の多くの社員が一堂に会する恒例の年次会合の場で、増田氏は「SPA(製造小売業)をやらなければアマゾンには勝てない」と語ったという。
徳間書店の買収について具体的に言及しなかったものの、なぜ買収したのか、どう活用するのかという「増田氏の真意」はこの一言で明らかだ。
SPAとはユニクロのファーストリテイリングのように、小売業が川上の製造分野まで手がけ、オリジナル商品を開発する経営モデルだ。つまり増田氏はCCC系列の店舗で扱う商品・サービスを、自ら開発しようと考えているのだ。
徳間書店側も「自社から良質なコンテンツをCCCに提供し、出版やライツビジネスなどの事業を拡大する」(業務管理部)と東洋経済の取材に回答しており、今後はアニメなどエンタメ関連の雑誌・書籍や関連グッズを、グループ向けのオリジナル商材として開発するとみられる。
ネット通販のアマゾンが圧倒的な品ぞろえによるロングテールを強みとするのに対し、増田氏は「アマゾンにはない、ここにしかない」というオリジナル性で差別化を図ろうと考えているのだ。
CCCの業績は近年、極めて好調だ。直近の2016年3月期は売上高2392億円、営業利益117億円と増収増益。2017年3月期決算はまだ開示されていないが、CCC関係者によるとやはり増収増益だったようだ。
背景にあるのは書店事業の成長だ。TSUTAYAを中心とするCCC系列の新刊販売書店は2016年末時点で全国に812店を数え、書籍・雑誌販売額は1308億円に上る。
過去10年間で店舗数は1.6倍、販売額は1.7倍に伸びており、書店チェーンとしては紀伊國屋書店(売上高は2016年8月期で1059億円)を上回る国内最大手となっている。
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