「3万年前の航海」をどうやって再現したのか

国立科学博物館のひみつ

日本人の祖先は、いつどうやって日本列島へ渡ってきたのか(写真:国立科学博物館提供)
2016年7月、2艘(そう)の草舟が与那国島から西表島を目指した。
このプロジェクトは、国立科学博物館(以下、科博)がクラウドファンディングで集めた資金で行われたものだ。
目的は何だったのか、どんな成果を得られたのかを海部陽介代表に聞いた(『国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』より転載)。

草舟で黒潮を越える

成毛:ずいぶんと日焼けしていらっしゃいますね。

海部:自分としては史上最大の日焼けです。

成毛:それもすべて「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」のせいですね。この写真、一見、映画の撮影のようにも見えますが、実験の様子なんですよね。2016年7月に実施された、沖縄の与那国島から西表島まで草舟で渡るというこのプロジェクトについては、新聞やテレビでも報じられたので、ご存じの方も多いと思いますが、改めてプロジェクトリーダーの海部陽介先生に目的や成果を伺います。先生、これはプロジェクト名どおり、3万年前に、実際にあったであろう航海を再現しようというものなんですよね。

海部:日本人の祖先は、いつどうやって日本列島へ渡ってきたのか。それを調べていくと、3万年前頃までに、おそらく台湾から琉球列島の各島に渡ってきていたことがわかりました。沖縄本島と宮古島の間は200キロメートル以上離れていますが、そこを舟で渡っているのです。

成毛:台湾と与那国島の間には黒潮が流れていますよね。

海部:当時もそうなら、祖先たちはそれを横断する必要がありました。それに、台湾から与那国島のような小さな島が見えていたのかもわかっていません。

成毛:ポリネシア人の先祖は、たまたまコンティキ号という船でたどり着いたアメリカ・インディアンだという説がありましたが、こちらの場合はたまたまたどり着いた、というわけではないんですね。

海部:今では、古代ポリネシア人は3500〜1000年前に東南アジア方面から航海してきたことがわかってきています。一方の沖縄は、その10倍も昔に意志を持って海を渡った人たちがいた場所だったと考えています。その理由の1つは、沖縄だけでなく本州にも、その頃に意図的な航海があった証拠があるからです。たとえば、関東から、3万8000年前の神津島産の黒曜石が見つかっています。黒曜石は石器の素材として好まれていたものですが、それが本州で見つかったのは、わざわざ神津島まで取りに行ったことを示しています。

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