「3万年前の航海」をどうやって再現したのか 国立科学博物館のひみつ

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海部:林良博館長のアイデアです。だいぶ前からこのプロジェクトをやりたいと考えていたのですが、なかなか予算が確保できずにいたという経緯があり、館長に相談したところ、「クラウドファンディングをやったらどうか」と。

クラウドファンディング支援者の名前が書かれた櫂(かい)を持つこぎ手チーム(写真:国立科学博物館提供)

謎解きの面白さをみんなとシェア

成毛:自前の資金をどう獲得するかは、独立行政法人の大きな課題ですから、他の法人も関心を持って見ていたでしょうね。いくら集まりましたか。

海部:目標額2000万円のところ、2600万円が集まりました。それに、クラウドファンディングという手法はこのプロジェクトにマッチしていたなと思います。一般的な研究は、結論が出てから発表するので、謎解きの面白さをみんなとシェアすることはなかなか難しいのですが、今回は謎解き体験そのものが面白いですし、失敗したとしても“すべて見せちゃおう”と思いました。やはり関心を持ってくれる人は多く、その輪がどんどん広がっていくのを感じましたね。

国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』(ブックマン社)は国立科学博物館地球館の楽しみ方をビジュアル満載でガイドしている(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

成毛:最終的には、台湾から与那国島への航海も目指していると伺っていますが。

海部:そうです。ただ、最初は2年後にそこを目指すと言っていましたが、そう簡単ではないので、今回の成果をまずきちんと整理したいと思っています。

成毛:ひとまず初回のプロジェクトを終えた今は、どんなことをしているのですか。

海部:GPSのログ1つを見ても、現場では気づいていなかったことが見えてくるので、何が起きていたのかを確かめています。

成毛:台湾から舟を出すとなると、台湾の人たちも関心を持ってくれそうですが。

海部:今回のプロジェクトへの関心もかなり高いようです。

成毛:一連のプロジェクトが成功すると、台湾から沖縄へ人が意図的に渡ってきたということだけでなく、いろいろなことが見えてきそうですね。

海部:祖先たちの謎を解くというのが直接的な目標ですが、日本人と呼ばれるわれわれも、かつてはどこかからやってきた日本人じゃない人でした。台湾の人も、中国人もみんなそうです。国家ができたのは最近の話ですし、人類はみんな複雑な歴史を持っています。それをひもといていくのが、僕らの役割だと思っています。そして、こういう認識がもっと広まって、日本人とかその祖先たちに対する考え方が変わることも期待しています。

詳細はプロジェクトの公式HPをご覧ください

成毛 眞 元日本マイクロソフト社長、HONZ代表

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なるけ まこと / Makoto Naruke

1955年北海道生まれ。元日本マイクロソフト代表取締役社長。1986年マイクロソフト株式会社入社。1991年、同社代表取締役社長に就任。2000年に退社後、投資コンサルティング会社「インスパイア」を設立。現在は、書評サイトHONZ代表も務める。『amazon 世界最先端の戦略がわかる』(ダイヤモンド社)、『アフターコロナの生存戦略 不安定な情勢でも自由に遊び存分に稼ぐための新コンセプト』(KADOKAWA)、『バズる書き方 書く力が、人もお金も引き寄せる』(SB新書)など著書多数。

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