クスリの大図鑑 <アルツハイマー型認知症> 神経細胞死に着目! 「老人斑」を作らせない

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アリセプト生みの親であるエーザイも、次世代薬の開発を進めている。老人斑はタンパク質の一種であるアミロイドベータ(Aβ)が凝集することで作られる。Aβは、γ‐セクレターゼとβ‐セクレターゼという二つの酵素によって切り出され、生成される。エーザイが開発中の薬はγ‐セクレターゼに働きかけ、Aβが作られる「過程」を阻害する(効き方[3])。一時期中止していた治験だが、再開準備が整った。一方、アステラス製薬が米コメンティス社から導入した薬は、β‐セクレターゼを阻害する作用があり、国内で治験の最終段階に入る準備を進めている。

ただ、アルツハイマー病の治験には特に時間がかかる。症状進行が比較的長期にわたるため、長いスパンで有効性を判断する必要があるからだ。

MRI検査で早期発見 専門医不足が問題

アルツハイマー病は何も突然発症するのではない。初期には、「同じことを何度も繰り返し聞く」「熱中していた趣味を突然やめるなど自発力が低下する」といった兆候が見られる。問診とMRI検査をうまく組み合わせれば、早期発見も可能になってきた。脳の萎縮部位に色がつく画像解析手法を導入し、診断の確実性を高めている専門病院もある。

ただ、高齢化に伴い、認知症患者が増加する一方で、的確に診断・治療できる認知症専門医の不足が問題視されている。現在、日本老年精神医学会が認定した認知症の専門医は全国で794名。専門医のいる医療機関は全国で303しかなく、しかも東京都の29に対し、青森・富山では各1とバラツキがあり、地域間格差が大きい。推定患者数200万人で計算すると一人の専門医が2500人以上を診ることになる。特に、医師一人の負担が大きい地域での専門医育成は至上命題だ。専門医の増加が、各地域での認知症理解促進にもつながる。

早期診断・治療はもちろんだが、アルツハイマー症状の改善には、多方面からのケアが欠かせない。日常生活における脳への刺激が、進行抑制につながるという報告もある。

たとえば、学習教室を展開する日本公文教育研究会の子会社「くもん学習療法センター」では、読み書き・計算の教材を使ったトレーニングで認知症の維持・改善を目指す。3月現在、介護施設や地域の健康教室等712施設で導入されている。


表とグラフの見方
 表は、疾病別の主要医薬品を2007年度売上金額の上位順にランキング。ただし一部の売上金額と前期比伸び率は本誌推定。また一部は薬価ベースでの売上金額を採用しており、売上高ベースより金額が膨らむ。一方、グラフは、代表的な先発薬と、その後発品とで自己負担額を比較した。後発品薬価は08年4月現在で存在する全品目の平均値で計算。また、実際の支払い時には薬局での調剤報酬等が含まれる場合がある。

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(週刊東洋経済)
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