クスリの大図鑑 <うつ病> 欧米に10年遅れのSSRIやSNRI 躁うつ病に効くのは?
あなたのクスリ、合っていますか?−−自分や家族の飲んでいる薬をもっと知ることが健康や安心につながる。効き方から市場シェア、選択肢の有無、後発品との価格比較、新薬開発動向まで、主な12の病気のクスリについて掲載。
2007年にうつ病で自殺した人の数は6060人。3万人余の自殺者の2割近くを占め、最も多い自殺原因となった。
うつ病を発症する人は世界的に成人人口の6・5~7%といわれる。日本の場合、650万~700万人がうつ病患者と想定される。うち治療に通っている人は約100万人。
うつ病の診断法として広く用いられているのは米国精神医学会が定めたDSM‐IV。抑うつ、興味の減退、食欲低下、不眠、焦燥、気力減退、罪責感、集中力減退、死にたくなる、のうち五つ以上が2週間以上続き、さらに極端な苦しみから、仕事、学業などの活動ができにくくなっている状態をいう。
こうしたうつ病の治療薬は日本でも1959年に発売となったイミプラミンに代表される三環系が画期的だった。脳内の神経伝達物質モノアミン類の働きを強化し、気分を持ち上げる効果がはっきりしていた。その後開発された薬の大半はこの薬の改良版だ。
三環系は便秘や尿が出ないといった副作用が強かった。そこで四環系が開発されたが、効果も弱かった。副作用を減らすことを主眼に次に開発されたのがSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、効き方[1])。モノアミンのうち、セロトニンだけに選択的に作用する薬だ。現在の抗うつ薬市場の主流で、パキシルがその代表だ。
このほかノルアドレナリンやドーパミンといった他のモノアミンの再取り込みも阻害するSNRI(効き方[2])やNDRI(効き方[3])も開発されている。再取り込みを阻害するのではなく放出するNaSSA(効き方[4])の開発も注目される。
ただし、これらの薬はいずれも欧米では発売済み。日本の抗うつ薬は欧米のほぼ10年遅れになっている。
なお、最近は、うつ病と思っていたら、実は、躁うつ病だったというケースが意外に多いことがわかってきた。躁うつ病患者とは、うつだけではなく、元気がありすぎる躁状態もある人のことだ。
「躁うつ病患者にはSSRIはほとんど効かない。デパケンやリーマスのほうが効く」と語るのは、日本うつ病学会理事長の野村総一郎・防衛医科大学校教授だ。デパケン(協和発酵工業)やリーマス(大正富山医薬品)は、脳由来の神経栄養因子BDNFを増やし、神経細胞を再生する。
表とグラフの見方
表は、疾病別の主要医薬品を2007年度売上金額の上位順にランキング。ただし一部の売上金額と前期比伸び率は本誌推定。また一部は薬価ベースでの売上金額を採用しており、売上高ベースより金額が膨らむ。一方、グラフは、代表的な先発薬と、その後発品とで自己負担額を比較した。後発品薬価は08年4月現在で存在する全品目の平均値で計算。また、実際の支払い時には薬局での調剤報酬等が含まれる場合がある。
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(週刊東洋経済)
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