クスリの大図鑑 <気管支ぜんそく(アレルギー)> 死亡者は激減だが高齢者の発病と「たばこ病」が課題
アレルギーは“国民病”になりつつある。中でも気道のアレルギーである気管支ぜんそくは患者数1000万人にのぼる。気管支ぜんそくは、何らかの刺激(アレルゲン)によって気管支を取り巻く平滑筋がけいれんし、気管支が細くなり空気が通りにくくなった状態をいう。病態が固定すると、たばこのにおいや気圧・温度の変化でも症状が起きるのが厄介だ。
治療薬は1990年前後まで平滑筋をリラックスさせる気管支拡張薬(効き方[1])が主流だった。その後、気管支鏡検査による研究が進み、白血球の一種=好酸球による“炎症の病気”だと判明すると、抗炎症薬である吸入式ステロイド(効き方[2])に注目が集まった。現在はステロイドを主体に、発作時に気管支拡張薬を使うのが主流。一方、炎症が起きる前段階で化学伝達物質の動きを抑制するのがLT拮抗薬(効き方[3])や抗ヒスタミン薬(効き方[4])。売り上げでも上位だが、ある呼吸器内科の医師は「処方現場の実感とはやや乖離がある。薬価の高さや宣伝の多寡に加え、吸入式より飲み薬を好む国民性、ステロイドへの漠然とした嫌悪感もあるのでは」と指摘する。
東京女子医科大学の永井厚志病院長(呼吸器内科)によると、ステロイド吸入器の形状は内外で大きく異なるという。日本は小さく目立たず、海外はカラフルで大きい。「日本ではトイレで隠れて吸入したりする。何も特殊な病気ではない。堂々と清潔な場所で吸ってもらいたい」。
気管支ぜんそくによる死亡者は年間0・3万人へ4割減少した。「ぜんそくは維持管理できる病気。一方、患者数700万人ともいわれるCOPD(慢性閉塞性肺疾患、たばこ病、主因は喫煙)は進行性で、喫煙習慣を続けると死に至る。高齢者の難治性ぜんそくと合わせ重要な課題」(永井病院長)。COPDは好酸球ではなく好中球の炎症のため、ステロイドではなくスピリーバのような気管支拡張薬が第一選択薬だ。なお、去年発売のぜんそく薬アドエア(ステロイドと気管支拡張薬の合剤)が適応拡大を申請している。
COPDは診断率10%と低い。たばこ規制も含め、今後大きな社会的な話題となりそうだ。
表とグラフの見方
表は、疾病別の主要医薬品を2007年度売上金額の上位順にランキング。ただし一部の売上金額と前期比伸び率は本誌推定。また一部は薬価ベースでの売上金額を採用しており、売上高ベースより金額が膨らむ。一方、グラフは、代表的な先発薬と、その後発品とで自己負担額を比較した。後発品薬価は08年4月現在で存在する全品目の平均値で計算。また、実際の支払い時には薬局での調剤報酬等が含まれる場合がある。
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(週刊東洋経済)
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