クスリの大図鑑 <骨粗鬆症> もはや“生活習慣病”? 女性中心に患者数膨張

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 あなたのクスリ、合っていますか?−−自分や家族の飲んでいる薬をもっと知ることが健康や安心につながる。効き方から市場シェア、選択肢の有無、後発品との価格比較、新薬開発動向まで、主な12の病気のクスリについて掲載。

意外かもしれないが、「お肌のターンオーバー」と同じように、骨も新陳代謝している。古くなった骨細胞は溶かされ(骨吸収という)、新たに修復される(骨形成)サイクルを繰り返している。

骨吸収(−)が骨形成(+)を上回り、骨強度が低下することによって「骨折のリスクが高くなる骨の障害」。これが骨粗鬆症だ。鬆という字は「緻密でない」という意味で、大根などに「鬆(す)が入る」とも使われる。レントゲン写真で患者の骨を見ると文字どおりスカスカの状態になっている。

骨粗鬆症患者は女性が多い。女性は生理的に骨密度が絶対的に少ないという傾向がある。さらに、閉経によって女性ホルモンが急激に減少することでも骨量減少が引き起こされるのだ。男性より一般的に長寿であるため、患者数が多いという側面もあるだろう。

不適切なダイエットやカルシウム不足の食事などの生活習慣も原因になることから、最近では、高血圧や高脂血症と同じように“生活習慣病”の一種と考えられることもあるようだ。

厚生労働省が発表した2005年の「患者調査」によると、国内の骨粗鬆症患者数は40万3000人。ただ、この数字は治療を受けている患者数を基に算出された値であり、潜在患者を含めると1000万人ともいわれる。高齢化に伴って今後はさらに増加するだろう。

骨粗鬆症の怖さは、骨がスカスカになること自体よりも、脆弱性骨折を招くことにある。大腿骨(太ももの骨)を骨折すれば往々にして寝たきりになったり、あるいは、背骨を圧迫骨折すると姿勢が崩れて、内臓疾患につながったりするおそれがある。

04年の国民生活基礎調査によると「介護が必要になった病因」として、脳血管性疾患に続いて骨折・転倒が2番目に挙げられている。患者ばかりでなく、介護に当たる家族のクオリティ・オブ・ライフ(QOL、生活の質)も損なう--骨粗鬆症は“女性だけの病気”では決してないのだ。

ウナギ由来の薬も! 新型女性ホルモンに注目

骨粗鬆症の治療薬で最も長く使用されてきたのは、腸でのカルシウム吸収を促進して骨代謝サイクルを活性化したり、骨形成を促進したりするビタミンD3製剤(効き方[1])だ。この分野で代表的な薬であるアルファロール(中外製薬)、ワンアルファ(帝人ファーマ)のいずれも四半世紀の歴史がある。

現在の主流は骨吸収(−)を抑えるもの、具体的には、骨吸収作業を担う「破骨細胞」の働きを直接・間接的に抑える薬が主流となっており、ビスホスフォネート製剤(効き方[2])、カルシトニン製剤(効き方[3])、SERM(Selective Estrogen Receptor Modulator=選択的エストロゲン受容体作動薬、効き方[4])など種類も豊富にある。

[2]のビスホスフォネート製剤は、破骨細胞が骨に取り付いて“吸収活動”するのを強力にブロックしてしまう。一方、[3]のカルシトニン製剤は破骨細胞を不活性化させて数を抑えるアプローチで、骨痛などの鎮痛作用も持つ。

カルシトニンは甲状腺から分泌されるホルモンで、ヒトよりサケやウナギのほうが強力といわれる。旭化成ファーマの「エルシトニン」のエルはウナギの意味。もちろんウナギから作っているのではなく化学合成された薬だが、構造式はウナギカルシトニンを基礎に、さらに安定性を高めたものだ。

骨吸収抑制薬でいちばんの注目株は[4]のSERMだ。一般に女性ホルモンの補充療法にはエストロゲンが使用され、骨粗鬆症にも高い効果を示すものの、乳ガンや子宮ガンなどの発生率を上昇させるリスクがあるとも言われている。その“欠点”を改善した薬剤がSERMだ。


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