クスリの大図鑑 <骨粗鬆症> もはや“生活習慣病”? 女性中心に患者数膨張
斬新な新薬候補は続々 早期診断も重要
SERMは骨など一部の組織ではエストロゲンの作用を示す一方で、乳房や子宮といった目的以外の組織では、逆に、エストロゲン作用を抑制するという仕組みになっている。少し乱暴な言い方をすれば、「ガンのリスクを高めないエストロゲン」。国内では04年にSERMとして初めてエビスタ(塩酸ラソフォキシフェン、中外製薬)が発売され、骨粗鬆症分野の医薬品売上高で3位に急上昇している。
現在開発中の新薬としては、ファイザー(米)の酒石酸ラソフォキシフェン、ワイス(米)の酢酸バゼドキシフェンと、メガファーマの開発する「第2世代SERM」が後期臨床試験へ進んでいる。
まったく新しいアプローチの新薬候補もある。その一つが、第一三共が07年に米アムジェンから国内の開発・販売の独占的な権利を取得した「デノスマブ」だ。
これは、破骨細胞の活性化に関与しているRANKL(receptor activator of NF−κB ligand)というタンパク質を標的とした薬だ。現在第2相の臨床試験が行われており、試験結果ではビスホスフォネート製剤と同等以上の効果が報告されている。作用期間が長いのが特徴で、治療が半年に1回の注射で済む可能性もある。
骨基質コラーゲンの分解に中心的な役割を持つ酵素であるカテプシンKの阻害剤オダナカチブ(メルク)も期待される候補の一つであるが、国内ではまだ開発されていないようだ。
国内の骨粗鬆症治療薬市場は1500億円に迫る勢いだ。ビジネス的な視点から見れば「成長市場」だが、裏を返せば医療経済への負担が増えるということにもなる。骨量測定など早期検診による予備軍の早期発見や、効果の高い薬剤の承認が今後の課題だ。もちろんカルシウムの多い食事を取ったり、適度な運動を心掛けるといった生活習慣改善も欠かせない。
表とグラフの見方
表は、疾病別の主要医薬品を2007年度売上金額の上位順にランキング。ただし一部の売上金額と前期比伸び率は本誌推定。また一部は薬価ベースでの売上金額を採用しており、売上高ベースより金額が膨らむ。一方、グラフは、代表的な先発薬と、その後発品とで自己負担額を比較した。後発品薬価は08年4月現在で存在する全品目の平均値で計算。また、実際の支払い時には薬局での調剤報酬等が含まれる場合がある。
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(週刊東洋経済)
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