クスリの大図鑑 <糖尿病> 中高年の3分の1が“患者” 完治薬なく新薬に熱視線
新薬候補は豊富 話題は「インクレチン」
同じ生活習慣病でも高血圧や高脂血症と違い、治療満足度の低い糖尿病領域には、製薬メーカーも新薬開発に力を入れている。まだアクトス1品目しかないインスリン抵抗性改善薬については、いくつもの候補品が期待されていたものの、開発品目の中止が続き、しばらく発売予定はない。その代わりとして期待がかかるのがインクレチン関連薬剤だ。
インクレチンとは、インスリンの分泌を促進する消化管ホルモンの総称。最大の特長は、血中グルコース濃度依存的なインスリン分泌促進作用を有することだ。わかりやすく言うと、急に血糖値が上がったときにだけ効く、ということ。既存薬では血糖値が高くないときにまで薬が効きすぎて逆に低血糖となり、死亡につながる副作用も起きていたが、インクレチンはその心配が少ない。すでに欧米で発売されているインクレチン「エクセナチド(製品名バイエッタ)」は、アメリカドクトカゲの唾液(!)から抽出した成分を基に作られた薬で、発売後3年目の売り上げは3億3000万ドルに達している。発売元の米イーライ・リリーとアミリン・ファーマシューティカルズ社が日本国内でも臨床試験を進めている。
インクレチンを分解してしまうジペプチジル・ペプチターゼIVを阻害して、その結果、インクレチンの働きを保持する薬(DPPIV阻害剤)の開発にも各社しのぎを削っている。国内でリードしているのは07年12月に厚労省へ承認申請を済ませたシタグリプチン(万有製薬/小野薬品工業)。次いでノバルティスファーマのビルダグリプチン(08年4月申請)が後を追う。シタグリプチンは海外では07年に発売されており、すでに売上高6億6800万ドルに達し、年商1000億円を超えるブロックバスター(大型新薬)に成長することは間違いない。ほかには、腸や腎臓でナトリウムとブドウ糖を交換する輸送体であるSGLTの働きを阻害することで、強制的に糖を排出する薬も開発が進んでいる。
糖尿病患者の増加には世界も頭を痛めている。国際糖尿病連合では、1985年時点で3000万人だった全世界の糖尿病者が03年には1億9400万人に急増し、さらに17年後の25年には3億3300万人になると驚くべき予測をしている。治療薬の発展に加え、予防医学や早期受診の啓蒙を進めて3大合併症に進行させないことが重要だ。
表とグラフの見方
表は、疾病別の主要医薬品を2007年度売上金額の上位順にランキング。ただし一部の売上金額と前期比伸び率は本誌推定。また一部は薬価ベースでの売上金額を採用しており、売上高ベースより金額が膨らむ。一方、グラフは、代表的な先発薬と、その後発品とで自己負担額を比較した。後発品薬価は08年4月現在で存在する全品目の平均値で計算。また、実際の支払い時には薬局での調剤報酬等が含まれる場合がある。
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(週刊東洋経済)
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