中国勢が日本のアニメを「爆買い」する事情 世界で稼げる力に注目、元やドルが乱れ飛ぶ
ちなみに1億元を支払ったのは、凱撒(カイザー)という広東省汕頭に本社を置く地場上場企業。祖業はアパレルだったが近年、ゲームやアニメに関連するエンターテインメント関連に業態転換している。中国ではアニメなどエンタメの方が、アパレルよりも稼げるビジネスになっているのだ。
米国でも進む日本アニメ投資
日本のアニメの稼ぐ力に着目しているのは、中国勢だけではない。冒頭で触れた市場の拡大は、外資が成長エンジンとして牽引したのだ。特に2015年の市場成長はほぼすべて、海外での配信や上映、DVD販売によるもの。もはや日本のアニメ市場の3割が外貨に依存している。おカネの出元は中国、米国がツートップ、以下にカナダや韓国、台湾といった国が続く。
米国のベンチャー企業・クランチロールは、クン・ガオ氏らカリフォルニア大学バークレー校の学生が立ち上げたアニメ専業の動画配信サービスだ。独立系だったが、2014年に通信大手のAT&Tとメディア投資のチャーニングループで作る合弁企業の傘下に入り、現在はグループの潤沢な資金を日本のアニメに積極的に投資している。
これまでに約40本の製作委員会に出資しており、代表例はカルト的な人気を誇る脱力系作品『けものフレンズ』だ。出資は単独で行うだけでなく、住友商事と合弁の投資会社(2015年設立)としても行っている。
クランチロール創業者で日本法人のトップも兼任するガオ氏は、「これまでは放映前に配信権を取得するだけだったが、出資によって放送の9カ月以上前から作品に関われる」と語り、有力な作品をヒットする前に掘り起こせるのがメリットのようだ。クランチロールも出資だけでなく、全額費用を拠出して劇場版アニメを製作する計画。現在日本で、複数の制作会社や出版社などに接触している。
外資が猛烈な勢いで流入している日本のアニメ産業。宮崎駿作品のような世界にも通用するヒット作を送り出してきた輝かしい産業である一方で、極めて労働集約的な制作体制に頼るという暗部を抱えた業界でもある。海外マネーが牽引する第4次ブームはどこまで続き、業界の何を変えるだろうか。
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