中国勢が日本のアニメを「爆買い」する事情 世界で稼げる力に注目、元やドルが乱れ飛ぶ

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製作委員会への出資の構成比は開示されていないが、関係者によると8~9割が深圳市騰訊計算機系統という中国企業。SNSアプリ・ウィーチャットで知られる中国のソフトウエア大手、騰訊(テンセント)の子会社である。

通常、テレビアニメを1クール作るには2億円程度の費用がかかることを踏まえると、同社はファーストシーズンだけでも1.6億~1.8億円程度を本作に投じている計算だ。近年、日本のアニメのほとんどは製作委員会方式で作られているが、大半のケースでは最大口企業でも3割程度の出資にとどまり、10社程度を集めてやっと制作費がまかなえる。

アニメは放送・上映してみなければ当たり外れが分からないため、投資リスクの低減という意味では各社ができるだけ少額の出資に留めるのは当然だ。この国内の常識からすると、テンセント子会社が1社で巨費を投じたのは極めて異例だ。

「中国への逆輸入が前提」だった

実はこのアニメには、製作当初から「使命」があった。日本で作られ、日本で放映された日本クオリティのアニメとして中国に逆輸入するというものだ。中国では今、日本のアニメが高騰している。有料動画配信サービスが激しい競争を繰り広げており、その中で「ユーザー獲得力のあるコンテンツ」として日本アニメの配信権をめぐる買い付け合戦が起こっているのだ。

日本のアニメとして生まれた『霊剣山』シリーズは、中国では複数の動画サービスに配信された

そういった中、テンセント子会社はすでに存在する作品を買い付けるのではなく、自ら出資リスクを負って新しい作品を製作し、それを「日本アニメ」として幅広く配信することでより大きなうまみを得ようと企図した。実際、『霊剣山』は日本での放送からやや遅れて中国でテンセント本体や、百度(バイドゥ)傘下の愛奇芸(アイチーイー)、優酷(ヨウク)など複数の動画配信サービスに供給された。

さらにテンセント子会社は中国での配信後、キャラクターなど『霊剣山』のIP(知的財産)をゲームやドラマなどに二次利用する権利を供与することで、国内企業と契約を結んでいる。その金額は実に1億元(約16億円)というから驚く。契約には複数のアニメ作品が含まれるが、中でもメインとなったのは『霊剣山』。配信による収入を含めると、ファーストシーズンの投資はかなり高いリターンを伴って回収されたようで、だからこそセカンドシーズンにもゴーサインが出たのだ。

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