トランプ・ルペンのリスクで市場はどうなる? 女子アナ4人組が新年度の株・為替を語る

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――いわゆる信用サイクルでいえば2018年でリーマンショックから10年ですよね。バブルの崩壊、金融危機の再来はありうるのか。2016年の年初はかなりパニック的だったんですけど。

岩下:トランプ大統領が「驚くぞ」といっていた米国の税制改革について、ムニューシン財務長官が「8月までに議会を通過させたい」といっているので、全体に遅れる。そうだとすると、米国の会計年度で来年以降に何か打ち出されるとすれば、2018年の米国の経済見通しは上げるということになると思います。

――そうすると、既に長く続いた(すでに7年9カ月)米国の景気拡大、まだそこまでは引っ張れる?

大槻:信用サイクルでいえば「そろそろですか?」というのはあるんですけれど、崩壊の鉄則としては、何らかの資産価格の行き過ぎがあり、なんらかのトリガーが弾かれた場合。それと、前回と同じ種類のものは普通出てこないので、金融商品バブルではないだろう。そうするとソブリンか不動産が怪しいかなと思っています。ベタすぎるけど不動産関連与信の対GDP比って、比較的不動産価格が上がっていないほうの国でも歴史的高値になってる。今、ブレグジットで急速にロンドンの不動産取引量が減っていますし、カナダが税制で規制を強化した。こういうことがトリガーになる可能性はある。

米中摩擦の行方は大きな焦点

――新興国、中国経済は最近あんまり話題にならないですね。

伊藤:2015年後半から16年前半の混乱で、やはり中国経済の世界経済への影響力の高まりが確認されたと思う。実需で大きなボリュームを占めているので、そこに依存している資源国や新興国は予想以上に大きいわけで、今、表の主役はトランプ大統領の米国だけど、裏の主役はやっぱり中国じゃないのか。

尾河:今は5年に1度の共産党大会の年だから大丈夫でしょう、ということになっている。でも、本当にそうなのか分からない。

伊藤:米中摩擦のリスクはやはりもの凄く気になる。トランプ政権が3月1日に公表した「2017年の通商政策課題」には、大統領の主張が非常に色濃く出ている。「現在の世界の貿易体制の恩恵をいちばん受けているのは中国だ」という見方をしている。不公正を正すためのアメリカのアクションが「中国資本は米国にもっと投資せよ」とか「中国市場を開放して、もっと透明性を高めよ」というものだったら、世界もその恩恵を受けることになるけれど、「米国が高関税をかけ、中国側が報復措置をとる」みたいな話になると、サプライチェーンでみんなつながっているだけに不利益が世界に広がる。トランプ大統領の通商問題に関する議論はサプライチェーンについての理解が欠けているように感じる。

岩下:ワシントンでは中国要人のロビー活動が凄いというんですね。トランプ大統領のやり方としても交渉相手に脅しをかけて自分に有利な方への動きを引き出していく。中国との関係もどこかの時点で現実路線になっていくんじゃないでしょうか。

大槻 奈那 ピクテ・ジャパン シニア・フェロー

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おおつき なな / Nana Otsuki

東京大学文学部卒業。邦銀勤務の後、ロンドン・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。格付け会社スタンダード&プアーズ、UBS証券、メリルリンチ日本証券にてアナリスト業務に従事。2016年1月よりマネックス証券 執行役員。2022年9月より現職。名古屋商科大学大学院教授、二松学舎大学客員教授を兼務。共著で、『S&P 日本の金融業界』シリーズ(東洋経済新報社)、『リテール金融のイノベーション』(金融財政事情研究会)、『本当にわかる債券と金利』(日本実業出版社)など。ロンドン証券取引所 アドバイザリーグループ・メンバー。政府委員を歴任。

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尾河 眞樹 ソニーフィナンシャルグループ(株)執行役員兼金融市場調査部長 チーフアナリスト チーフアナリスト

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おがわ まき / Maki Ogawa

米銀の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替の運用と金融市場の調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析を担当。2016年8月より現職に就任し、レポートやテレビ、雑誌などのメディア等を通じて幅広く個人投資家に向けた金融市場の情報発信を行っている。趣味は茶道(裏千家)、読書、市場関係者や仲間との飲み会などの交流。モットーは「東京市場を熱く(厚く)する!」。セミナー、講演、レポートの執筆を通じて、短期の回転売買でなく腰を据えた長期投資家を増やし、日本の金融市場の活性化と個人投資家の資産形成をサポートしたいと考えている。

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伊藤 さゆり ニッセイ基礎研究所 主席研究員

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いとう さゆり / Sayuri Ito

早稲田大学政治経済学部卒業後、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)を経て、ニッセイ基礎研究所入社、2012年7月上席研究員、2017年7月から現職。早稲田大学大学院商学研究科修士課程修了。早稲田大学大学院商学研究科非常勤講師兼務。著書に『EU分裂と世界経済危機 イギリス離脱は何をもたらすか』(NHK出版新書)、『EUは危機を超えられるか 統合と分裂の相克』(共著、NTT出版)。アジア経済を出発点に、国際金融、欧州経済を分析してきた経験を基に、世界と日本の関係について考えている。趣味はマラソン。

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岩下 真理 大和証券 チーフマーケットエコノミスト

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いわした まり / Mari Iwashita

慶應義塾大学商学部卒業後、太陽神戸銀行(現・三井住友銀行)入行、市場部門で国内経済、円金利担当のエコノミストを経験。2007年4月大和証券SMBCで日銀ウォッチャーを担当。2009年に日興コーディアル証券でチーフマーケットエコノミストとしてホールセール調査の立ち上げに参画。2011年4月SMBC日興証券チーフマーケットエコノミスト、SMBCフレンド証券を経て2018年1月より大和証券、現職。総務省・消費統計研究会委員。ロイター・コラム、時事通信「円債投資ガイド」を定期的に執筆中。仕事のモットーは3つ。(1)世界地図の上で物事を考えること、(2)ホットで付加価値のある情報提供と分析、(3)わかりやすく楽しい経済解説。アネクドータルな情報収集に加え、経験値と好奇心のフル稼働で潮目の変化を読み解く。趣味は世界遺産巡りで、パンダ好き。かつては歌姫、意外にもボーリングは得意?!

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