3月15日は重要イベントが重なったが、総じてみれば無難に通過した。
米国のFOMC(連邦公開市場委員会)では事前予想通り0.25%の利上げが決定された。今回はFOMC直前になって、イエレンFRB(米国連邦準備制度理事会)議長、フィッシャー副議長を含む複数のメンバーが立て続けに3月の会合での利上げを示唆したため、今後利上げペースを速める方針なのではないかとの観測が広がっていたが、経済見通しや金利予想に特段大きな変化はなく肩透かしを食らった格好。焦点となっていたFOMC メンバー17名による政策金利見通しも、2017年の中央値が1.375%と年内残り2回(通年で3回)の利上げが予想されており、昨年12月時点の予想と変わらなかった。結果ドル安が進行したが、「利上げペースは緩やか」とのメッセージが好感され米国株式市場は堅調に推移している。
同日実施されたオランダの議会選挙も、台風の目となったウィルダース氏率いる極右政党、自由党(PVV)は伸び悩み、ルッテ首相率いる中道右派の自由民主党(VVD)が第1党の地位を死守した。これでオランダのEU(欧州連合)離脱リスクは後退し、今年控えているフランスの大統領選、ドイツの連邦議会選挙への悪影響はなくなった。EU当局者もさぞやホッと胸をなでおろしていることだろう。
これらのイベントが波乱なく終了したことで市場のリスクセンチメントは良好だ。FOMC後にドルは下落したものの、リスクオンの環境下で1ドル=110円を大きく割り込むような円高にもなりにくい。週足ベースでみれば、ドル円はまだ一目均衡表の雲上限1ドル=111円39銭付近~115円ちょうど付近までのレンジに収まっており、しばらくは110〜115円のレンジ内で落ち着く可能性が高いとみている。
米国「為替報告書」で中国は標的となるのか
ただ、4月以降は再び様々な波乱要因が控える。筆者が注目しているのは主に次の3点だ。
第1に米国の「為替報告書」が挙げられる。米国財務省が4月と11月の年2回、議会に提出している文書で、諸外国の経済政策、通貨政策を分析したものである。トランプ大統領が選挙中から「中国を為替操作国に認定する」と再三述べてきただけに、4月の為替報告書で中国が実際に為替操作国に認定されるかどうかに注目が集まる。
ただ、(1)一部報道によれば、トランプ大統領の経済顧問ステファン・A・シュウォースマン氏が中国を為替操作国に指定しない可能性について示唆している、(2)中国は自国通貨買い介入を行っているのであり、貿易を有利にしようと人民元安誘導を行っているわけではない、(3)為替操作国に認定した場合、米国は中国製品に対して関税を引き上げる可能性があるが、制裁目的の関税引き上げはWTO協定違反になるとの見方が一般的(例外的に認められる場合もある)、などを考慮すれば、4月の為替報告書で早速中国が為替操作国に認定される可能性は低い。
しかし、1月20日の大統領就任演説をみてもわかるとおり、トランプ政権が「保護主義」に軸足を置いていることは明らかだ。
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