政治はバカでも経済はしぶとい
いささか乱暴な言い方で恐縮なのだが、経済を見るに当たって、「政治はバカでも、経済はしぶとい」という格言(でもないか……)を筆者は、つねに意識することにしている。
もちろん、政治と政治が決める経済政策が経済に影響を及ぼすことは多々あるのだが、当面の政治の良しあしと、経済の状況を直接結び付けて解釈しないほうがいい場合が多い。
典型的なのは、トランプ大統領の米国だろう。
本連載で、かんべえ先生とぐっちーさんが指摘されたように、トランプ氏は大統領就任以来、話題を提供する点では非凡でも、具体的な政策において成果が乏しい。それはそのとおりなのだが、米国の経済はおおむね好調であって、実は、トランプ氏が嫌うオバマ前大統領時代の経済政策がよかったということなのだが、株価の上昇が「トランプラリー」と名付けられるなど、あたかもトランプ氏が経済や株価にプラスに貢献しているかのようだ。
実際には、政権幹部人事の議会承認も進んでいないし、減税やインフラ投資がどう実現するかも定かでない。
米国で起きた「トランプ当選」という現象は(付け加えると「バーニー・サンダース」大善戦という現象も)、ヒラリー・クリントン氏に代表される通常なら、お金持ちではなく一般市民の味方であるはずの「リベラル」が、金融業や軍事産業などからの献金にまみれて(端的にいえば「買収されて」)、本来の支持層を裏切ったことを、多くの有権者に見破られたことに問題の本質があるのではないか。
総得票数が多かったとはいえ、選挙資金にあっても、メディア受けにあっても、普通なら圧勝するはずのヒラリー・クリントン氏(いかにも感じの悪い人物ではあったと個人的には思うが)が一敗地にまみれたところに、現在の米国社会の問題点が象徴されている。しかし、米国の経済自体は好調であり、株価は高値圏にある。
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