たとえば、安倍首相退陣の場合、次の首相候補として最有力なのは石破茂氏だろうが、石破氏は、官僚に評価されるタイプの「勉強家」であり、消費税率引き上げに積極的であるように見える。日銀総裁人事であっても、消費税率引き上げであっても、こと株価にあっては「総崩れ」となる可能性が否定できない。
もっとも、相場にあっては、いかなる場合にあっても、リスクは存在しているので、このリスクだけを特別視するべきではない。とはいえ、海外と比較して安定しているように見えたわが国の政治も、そう安心できる状況にはないことを頭に入れておきたい。
しかし、現状では、もろもろの政治的な不確実性はあっても、当面は米国経済が元気で、中国の経済も短期的には持ち直していることもあり、経済はそこそこに好調な状態にある。
今は、たぶん「小バブル」段階?
さて、この原稿を書いている最中に、FRB(米連邦準備制度理事会)が短期金利の代表的指標であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導レベルを0.25%引き上げる「利上げ」を発表した。予想された利上げであり、各種の株価や為替レートに大きな影響は出ていない。
一方、経済と資産価格の循環を考える場合、たとえば株価を見た場合に、現在の水準は「高めだ」といわざるをえないレベルに達している。
たとえば、米国の株価水準に関しては、ロバート・シラー氏の「CAPE」(物価修正済みの過去10年平均の利益から計算された「景気サイクル調整済み株価収益率」を見ると、現在の株価水準(CAPEで29倍台)は、ネットバブル時は別格としても、2008年のリーマンショック前よりもかなり高く、1929年の大暴落時の直前とほぼ並ぶレベルにある。
感覚的にはまだ「小バブル」くらいだと思うが、経験則的には、これからさらに株価が上がると、「今の株価水準は一見高そうに見えるが、それなりに合理的なのだ」と説明しようとする新理論(しばしば同時に「珍理論」。たとえば日本のバブル時に高株価を正当化しようとした「Qレシオ」のように)を述べる人がどこかから現れて、その後にクラッシュがやって来るというのがお定まりのパターンだ。
投資家は、「まだ」降りる必要はないと思うが、「まだは、もうなり」という相場格言もあることなので、警戒レベルを1段階上げながら運用に臨むべきだろう。
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