3月17~18日にドイツで行われたG20(主要20カ国・地域財務相中央銀行総裁会議)では、米国財務長官として初の国際会議に参加したスティーブン・ムニューシン氏が、「米国は現行体制(自由貿易)の下で悪い条件を押し付けられてきた」と主張。共同声明に「公正な貿易を確実にする」といった具体的な約束を盛り込むことを求めた。
この主張は認められなかったものの、米国に譲歩する形で昨年のG20共同声明にあった、「あらゆる形態の保護主義に対抗する」との文言は削除された。一方、為替政策については、為替レートの過度の変動や無秩序な動きは経済および金融の安定に対して悪影響を与えるという認識や、通貨の競争的な切り下げを回避するとして、輸出を増やすため意図的な通貨安への誘導を政策の目標にはしないというこれまでの合意を再確認すると、声明に明記されることになった。
ムニューシン財務長官が今回のG20で主張した「現在の貿易において米国は不当な扱いを受けている」という考えは、トランプ大統領の思考の根底に流れていて、その最大の標的が中国だとすれば、いずれ同国を為替操作国に認定する可能性ははあるかもしれない。この場合、一時的には急速な人民元高が進行するものの、それが中国経済を一段と悪化させるとの見方が広がれば、足元の資本流出に拍車がかかり、最終的には人民元が大幅に売られる可能性もあるだろう。いずれにせよボラティリティーが高まりリスクオフとなれば、ドル円には一時的とはいえ大幅な円高をもたらす公算が大きい。
仏大統領選、予断許さないルペン候補の支持率
第2に、4月23日にはフランス大統領選の第1回投票が行われる。最新の世論調査(フランス・テレビジョン、3月3日~8日に実施)の得票率は中道系独立候補のマクロン氏が26%と、2週間前の調査から6%ポイント上昇。極右政党・国民戦線のルペン氏は25%と横ばい。共和党(中道右派)候補のフィヨン元首相は20%と1%ポイント低下し、僅差ではあるもののルペン候補は最近勢いを失っているようだ。一部報道されているルペン候補の秘書給与のスキャンダルなどが影響しているかもしれない。
仮に、第1回投票でルペン氏が勝ったとしても、決選投票では敗れるとの見方が優勢で、今回のオランダ議会選挙でルペン氏と志を同じくする自由党のウィルダース候補が敗れたことも、ルペン候補にとってはマイナスだ。それでも選挙までまだあと1カ月を残しており、この後支持率の変化を見守る必要があるだろう。と同時に、昨年の英国民投票でも事前の世論調査とは異なる結果となったことを踏まえれば、世論調査を過信することなく警戒しておくべきといえよう。
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