――トランプ大統領は公約に掲げていたオバマケアの代替案を採決寸前で取り下げました。これをどう見ますか?
大槻:せっかくの改革が腰折れるのでは、との懸念で市場が動揺するのは止むを得ないですね。閣僚もほとんど決まっていないし。でも、まだトランプ政権はスタートから2カ月余り。とにかく大きな改革をやろうとしているのだから、軋轢が大きいのは至極当然。米国株も、ニュースの直後に大きく下げた後に戻しているし、市場の反応は意外と冷静。問題は次の一手。たとえば、市場の期待も大きい税制改革をどう進めるのか。もしそれもダメだったら、市場もさすがに冷静ではいられない。
基本はドル高だが「ツイート」で動きはゆっくり
――トランプ政権でドル高なのか、ドル安なのか。これはずっと見解が分かれていますね。
尾河:やっぱり私は「ドル高」だと思う。今年は年末1ドル=120円ぐらいと見ているんですけど。トランプは国内向けには「減税する」「インフラ投資をする」としていて、今後詳細が出てきますが、これはインフレ要因。国外向けには保護主義を掲げて「国境税調整をやる」といっています。実質上の関税引き上げで輸入物価が上がってしまうので、これもインフレにつながる。結局はドルが上がる、米国の長期金利が上がる方向だと思っています。
就任直後はトランプラリーでドル円と米国株がパラレルに上昇する展開だったけど、1月20日以降は相関が崩れて株はどんどん上がるけど、ドルはいまひとつ上がらない状況だった。これはどっちが間違っていたのかといえば、やはり、保護主義の副作用が意識されてドルの上値が抑えられていたと思うので、米国の金利が上がってくればドル高になる。