――ストライキなんて知らない世代ですね。
大槻:イタリアとかフランスではしょっちゅうやっているのにね。
伊藤:ECB(欧州中央銀行)で聞かれましたよ。「日本は賃金がなぜ上がらないんだ。完全雇用でしょ。みんなどう対応しているんだ」って。企業収益がよくて、人手不足の中で賃金が上がらなくてよいというような遠慮がちな労働者の姿が欧州ではイメージしにくいのかもしれない(笑)。欧州では、物価と賃金のスパイラルが生じやすい国もある。ゼロ近辺だった物価上昇率が2%になったことで、賃金形成も変わってくるだろう。ドラギ総裁が「デフレリスクは去った」と言っています。日本とはかなり違う。
いざというときに打つ手なしの日銀
尾河:日銀に話を戻すと、物価目標が達成できないままに、こうなっちゃうとね。急に円高になったり、株安になったりというリスクはあるわけ中で、日銀はどうするんだろう。追加緩和といってももう手段は限られる。マイナス金利の深掘りが考えられるけれども、金融機関からのブーイングが凄くて封じられている感があるし。いまゼロ%をメドとしている10年債利回りの引き下げというのも銀行株が大きく下がりそうだし。
大槻:そう考えると、10年国債利回りのメドを市場金利の上昇に応じて先に引き上げておく可能性はあるんじゃないですか。短期のマイナス金利のところはもうこれ以上下げられないとなると、長期をあらかじめ上げておいて、尾河さんの指摘のような円高、株安になったら、指し値で抑えに行く。
岩下:サプライズでやっちゃうとまた、問題になるから、新しいオペの運営で信頼感を再構築してからだったらいいですね。
――日本株については年末どのくらいとみていますか。
大槻:日経平均で2万円強程度とみてます。経営者の方々の見方も2万1000~2万2000円に集中している印象です。来年度については、強気で見ている人がとても少ない。まぁ確かに、シニカルにいえば、米国の景気、トランプ大統領の政策以外に材料がない。
尾河:私もそんな感じです。上向く要素は為替しかないし、それも米国次第だし。
岩下:日本のGDP(国内総生産)成長率でいえば、17年度はエコノミストのほとんどが1%以上を予想している(四半期とも1.1~1.3%台)。これって久し振りのことなんですけどね。