トランプ政権のメディア対応は特殊じゃない 過去の大統領もメディアと確執あった
米国で大きくクローズアップされているトランプ大統領と、伝統的なメディアとの確執。「国民の敵」などと批判を口にする同政権にメディア側はどう対処すべきか。英『エコノミスト』誌編集長を歴任し、現在は米大手通信社ブルームバーグ編集長を務めるジョン・ミクルスウェイト氏に聞いた。
――トランプ政権と米国の伝統的なメディアの対立が深まっています。
メディア側はトランプ大統領に対して従来と異なるアプローチをするのではなく、歴代の大統領と同じ扱いをするべきだ。いいことをしたのであればそれを書き、間違った政策を行ったのならば指摘する。それがベストのアプローチである。ブルームバーグの立場もそうだ。トランプ大統領の就任以降、特別な声明を出した報道機関もあるが、当社はそのようなことはしない。
オバマ前大統領も保守系のFOXテレビとの関係が悪化し、記者会見などから排除しようとした。ほかの歴代大統領もすべてのメディアとの関係が良好だったわけではない。
トランプ大統領が特殊なわけではない
――ホワイトハウスは一部のメディアを「ギャグル(カメラなしの記者会見)」から締め出す措置を講じました。
2月下旬に起きた締め出しの経緯はこうだ。ニューヨークタイムズやCNNテレビなどのジャーナリストを出入り禁止にした。当社はかつてギャグルに出席したこともあったが、今回の措置を見て「公共の益」にはならないと判断し、出席しないことを決めた。ウォール・ストリート・ジャーナルも同じ判断だった。出入り禁止は公式に発表されたわけではなく、ホワイトハウスの対応そのものに気づかないメディアもあった。報道側の知る権利という観点からいえば、ホワイトハウスとメディアの関係を悪化させた措置だったといえる。
――トランプ大統領は就任直前、英国の「ブレグジット(Brexit=EUからの離脱)」賛成派だったマイケル・ゴーブ前司法相が質問者を務めた英タイムズ紙のインタビューに応じるなど、特定のメディアを重視する姿勢が顕著です。
今は様子見の段階だろう。ただ、特定のメディアに対するひいきはトランプ大統領から始まったわけではない。ジョージ・W・ブッシュ元大統領もニューヨークタイムズとの関係があまりよくないといわれていた。特に驚くことではない。
現在のホワイトハウスとブルームバーグは大人の関係。当社は中立的な立場で対応している。ベネズエラをめぐる問題をスクープしようとしたとき、「報道する時間を遅らせてほしい」との要請があり、受け入れた経緯があるが、当社の雑誌「ビジネスウィーク」ではトランプ大統領に批判的な記事も掲載している。
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