P&Gが他社に無償で「成功事例」を教えるワケ 成果を追及したら、女性管理職3割になった
――ところで、多くの日本企業が管理職の3割を女性にすることを目指していますが、平均的な日本企業では、まだ1割程度しかいません。一方、P&Gジャパンは2013年に管理職女性比率が3割に達しています。
現時点で管理職に占める女性比率は32.1%です。総合職の従業員に占める女性比率が37.8%ですから、ほぼ、社内の人口構成に比例して昇進できるようになってきた、と言えます。ただ、当社はこれまで「女性を何割にする」といった数値だけを目標にしたことはありません。
当社のダイバーシティ&インクルージョン推進は約25年の歴史があります。最初は1992年~1998年の「女性活躍推進期」。ここで重視されたのは「女性にも活躍の場を」ということでした。
まずは女性たちがお互いに励ましあったり、先輩の話を聞いたりしよう、という感じで自然発生的に「ウーマンズネットワーク」が発足しました。私は当時、入社したてで「すてきな先輩女性の話が聞ける」ことがうれしくて、よく参加していました。職種ごとに社内で集まって、仕事の相談をしたり、仕事と家庭の両立について話し合ったり、プライベートなことも率直に情報交換していました。
一人ひとりの強みが活かされる
――「女性活躍」に取り組み始めた日本企業で、最近でこそそういった取り組みをしているところが増えていますが、だいぶ早い印象を受けます。
当社の場合、女性活躍の取り組みに1990年代半ばからは変化も生まれました。さまざまな職種で女性のネットワークが生まれて活発に活動をしていたところ、社内から疑問の声も出てきたのです。「どうして女性だけを対象にするの?」という男性の声や「女性だけだと男性社員の理解も得にくい」といった女性の声などがありました。
そうした流れを受けて、ステージ2に移行しました。ここでは「女性」だけではなくて、他の要素も含めた「個々の多様性を尊重」することを重視しました。1999年~2007年を「ダイバーシティ推進期」と名付けています。ステージ3は2008年からで、当社では「ダイバーシティ&インクルージョン推進期」と位置づけています。ここで重視しているのは「多様性を受容し活用すること」です。インクルージョンを重視するのは、違いが「ある」だけでなくそれを活かすことが、組織がイノベーションを起こすために必須であるためです。
――日本の企業で女性活躍やダイバーシティの受容が進みにくい理由として「企業価値に結び付く」という認識が薄く、女性の支援にとどまっていることがあります。P&Gではダイバーシティがなぜビジネスにとって重要と思われているのですか。
特に重要なことが3つあります。第1に、会議でたくさんの意見が出ます。これを毎日、実感しています。多様な意見が出ることは、お客様の多様なニーズを理解し、当社が重視するイノベーションへの第一歩になりますから、これはとても重要なことです。
第2に、多様な社員のニーズが満たされる、または多様な人材が活躍できる場の雰囲気があるので、多様な人材を引き付けることができます。これは採用や研修コストにも影響してきます。第3に、生産性の高い組織の構築につながります。当社はつねに無駄のない組織体制で仕事をしており、余剰はありません。従って、一人ひとりの強みが活かされることで、生産性向上につながります。
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