古代ローマの栄枯盛衰から学ぶべき「教訓」 中間層が没落する国は衰退の道をたどる

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ローマは飽くなき領土の拡大を目指して戦争に明け暮れ、食料生産を属州の奴隷労働に頼るようになったことで、豊かな中小農民は凋落の憂き目に遭い、無産市民となった農民は華美と飽食におぼれ、「兵役は市民の義務であり誇りである」という観念も失われていってしまいます。180年にマルクス・アウレリウス帝が死去して五賢帝の時代が終わりを告げると、ローマでは内戦と異民族の侵入が繰り返されるようになります。繁栄の土台であった豊かな中間層が喪失し、軍隊の主力をゲルマン人など異民族の傭兵に頼るようになったとき、ローマは確実に衰退・滅亡への道に近づいていったのでした。

このように歴史を振り返ってみると、国家の繁栄にとって中間層がいかに重要であるか、よく理解できると思います。古代ギリシャにおいても、古代ローマにおいても、その後の大帝国においても、それぞれの繁栄の時代は豊かな中間層の勃興とともに誕生し、豊かな中間層の喪失に伴い、国家の分断が起こり国力を衰退させていったのです。古代ローマの事例は、私たちが生きるグローバル経済下でも貴重な教訓として生きているといえるでしょう。

現代の「グラックス兄弟」は何をすべきか

まさに住宅バブル崩壊後の米国では、中間層の疲弊と経済格差の拡大によって、国家の分断ともいえるさまざまな出来事が起こっています。富裕層と呼ばれる人々とそうでない残りの人々とのあいだに、経済的な格差を起点として、そこから生じる生命の安全における格差、食の安全における格差、教育を受ける機会の格差など、その他もろもろの格差が広がってきているのです。

これらの格差を止めるためには、現代のグラックス兄弟のような政治家が現れる必要があります。グラックス兄弟は富裕層への過度な利益の偏りを修正し、中間層の復活を試みようとしましたが、これは現代でいえば、過度な株主資本主義への傾倒を改めることではないのでしょうか。すなわち、巨額の不労所得(株式譲渡益や配当)を稼ぎだす富裕層には多少の税率の引き上げをお願いするのは当然として、過剰な節税に躍起になっているグローバル企業にも正当な税金を支払ってもらうようにするのが、格差の拡大を緩和する最大の処方箋になるのではないかと思うのです。

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