ベンツ「Eクラス」最上級車はSクラス並みだ 権威主義者も悩ませる超フワフワの乗り心地
しかしながら、保守もそう悪いものではないのは、たとえば乗り心地だ。最近のメルセデスはスポーティヴネスとか若々しさとかを訴えるべく、全般に硬めに仕立てられている。若向きのAクラスはそうだったし、Cクラスもそうだった。新型Eもそう。けれど、E400のみは異なり、フワフワである。という噂は、筆者も耳にしていた。じつはE200など4気筒系Eクラスについて筆者は未体験なのだけれど、これだけはいえる。土曜日、世田谷の環七沿いのファミレスで受け取ったE400は走り出すなり超フワフワで、スプリングがマシュマロ製であるかのように思えた。
メルセデス初の新エアサスを採用
E400は、AMGを除く Eクラスでゆいいつエア・サスペンションが奢られている。それも「AIR BODY CONTROL」と呼ばれるメルセデス初の新方式で、フロントに2つ、リアに3つ、サイズの異なるチャンバーを備えていて、これによりサスペンションの硬さを3段階に調整することができるという。
素晴らしいことに、このフワフワ感はあらゆる速度域で維持される。コーナリング中も突っ張った感がない。いかにも煽りそうなのだけれど、煽らない。大仰な揺れを人工的におさえつけているわけだけれど、じつに自然なふるまいに終始する。慣性の法則から解放されたようにフワフワのまま、それでいてスッとした姿勢を維持して、山道さえも走り続けられる。
ダンピングのモードは、例によって「コンフォート」「スポーツ」「スポーツ+」と3段階、センターコンソールのスイッチで切り替えできるけれど、スポーツを選ぶ理由が「試乗時の実験のため」以外には見つからない。せっかくのマシュマロを硬くしてどうするんだ。細かいサイプが刻まれたスノー・タイヤ、ヨコハマのアイスガードをテスト車が履いていたことも、乗り心地のまろやかさに輪をかけていることは間違いない。
メルセデス・ベンツの最上級モデルのSクラスには、AIRマチックサスペンションという名のエア・サスがついているけれど、乗り心地はあれによく似ている。ご承知のように、Sクラスは世界に冠たるメルセデスの旗艦である。世界で一番上等な高級4ドア・サルーンであって、これより上はあったとしてもないも同然。したがって、E400がSクラスのようだった、という筆者の凡庸な感想は、自分で書いていて気づいてなかったけれど、最上級の褒め言葉なのだ。