実はアメリカは「産休・育休制度」の後進国だ なぜ3カ月無給?アン・ハサウェイが訴え
全米ではカリフォルニア、ニュージャージー、ロードアイランドの3州の法律が順にそれぞれ6週間、6週間、4週間の有給休暇を規定。ニューヨーク州も2018年1月から家族を理由とする8週間の休暇取得を権利として認め、週の給与の50%を払うよう定める法律を段階的に施行予定で、2021年の時点で最終的に12週間、週の給与の67%の支給が実行されれば、全米で最も先進的な産休・育休制度になるという。サンフランシスコ市のように自治体単位で同様の制度を取り入れているところもある。
もちろん、法律で義務付けられていなくとも有給の産休・育休制度を設けている企業はある。ここ数年でアマゾンやネットフリックス、マイクロソフト、スターバックス、フェイスブックなど、特に西海岸の大企業でより寛大な制度を設ける動きが加速しており、なかには父親に有給の育休を認める企業も出てきた。
それでも、CNNによれば全米で有給の産休・育休を認めている企業は全体の20%に満たない。CNNの記事は、ある調査で父親の36%が職場でのポジションが奪われる怖さから育休は取得したくないと答えたことも紹介している。
ステレオタイプから変えていかなければ
ハサウェイは国連でのスピーチで、育児や家事が「女性の仕事」とされるステレオタイプから変えていかなければならないと訴えた。そうすることは、父親の存在価値をもっと尊重することでもある、と。
「産休制度に限らず、性別をベースにした政策というのは見かけが良いだけの鳥かごだ。……こうした政策は、女性は職場にとって不便な存在だという見方を生む。男性は、限られた生き方にがんじがらめにされているように感じるだろう」と、ハサウェイは語った。「女性を解放するためには、男性を解放しなければならない。……父親を軽視して母親に過剰な負荷をかけることを、どうして続けていかなければならないのか」
ハサウェイは、「お父さんが2人という家族にとって、『産休制度』は何の意味を為すのか」とも指摘した。アメリカでは養子縁組や同性婚、シングルマザーやファザーなど、家族の形態も多様化してきている。
ドナルド・トランプ米大統領は昨年、選挙キャンペーン中に「6週間の有給の産休制度」を公約したものの、その対象は「出産した女性」に限られており、父親や養子縁組で子供を設けた家族は適応外としていた。国際女性デーに男性の権利についても訴えたハサウェイの声は、トランプ政権に届いただろうか。
(文:小暮聡子/ニューヨーク支局)
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