低スキルの会社員を襲う「長寿化」という悪夢

「ライフ・シフト」共著者が100年ライフを語る

私たちは長く生きるだけでなく、平均的に見て、より長く生産的でいられる。これは大きな変化です。もちろん、マルチステージの人生では、移行のための時間をとられますし、挑戦的な仕事に割ける時間も少なくなるかもしれません。そうしたキャリアの歩み方を考慮するとどうなるか。平均的な生産性は現在よりも落ちるけれども、長く働くようになることで、全体としてより多くのGDPを生み出すことになるのではないでしょうか。

オートメーションやロボット技術も、私たちが高齢まで働くこと、また長く生きることをサポートしてくれるでしょう。何よりも、100年ライフのコアにあるのは、私たちの選択です。個人として、あるいは社会として長寿化に対応しなければ、GDPにとってマイナスでしょうし、適切に対応するならば、この長い人生の資金を賄うことができ、GDPにとってプラスとなるでしょう。

高スキルの人だけが生き残る世界が来る?

――GDPはこの先も経済を測るよい指標となるでしょうか?

経済活動、すなわち生産されるアウトプットを測る指標としてはよいと思います。ですが、繁栄の指標としてはどうか。人々が自身の再充電、再生、再教育のために時間を使うことは、賢明な投資です。しかし、そうした活動はGDPでは捕捉できません。国が豊かになるにつれて、また私たちが長生きするにつれて、本書のなかで「無形資産」と呼ぶものにますます焦点が移っていきます。繁栄や幸福の傾向をとらえる指標としては、GDPは不十分なものとなっていくでしょう。

――100年ライフに適応できるのはスキルの高い一部の労働者だけで、そうではない普通の労働者は仕事を失うだけではないかという意見があります。

私もそのことを心配し、真剣な懸念を抱いています。マルチステージの人生には強力な資産が必要です。金銭的な資産、それに教育機会のような資産です。これらの資産やスキルがない人は、より長く働くことが難しいと思われます。

歳を取るにつれて、定型的な仕事を得ることは難しくなっています。そうした仕事をしている人々にとっては、高齢化こそ本当の問題です。新しいテクノロジーが雇用機会を劇的に減らすようなものである場合、問題は深刻化します。貧困に陥れば平均余命は短くなり、100年ライフを生き抜くのも難しくなるでしょう。

政府は長寿化とテクノロジーの組み合わせに緊急に対応する必要があります。まず、多くの人が長寿を楽しめるように、ヘルスケアと医療を見直すべきでしょう。次に、このトレンドから負の影響を受ける人たちへの所得サポートを考える必要があります。最後に、スキルを高め、異なる仕事への移行も可能となるように、教育と職業訓練の方針を見直す必要があります。

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