低スキルの会社員を襲う「長寿化」という悪夢 「ライフ・シフト」共著者が100年ライフを語る

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実際、1万2000人以上の人々が、私たちのウェブサイトを訪れ、それぞれのライフストーリーを記載し、無形資産の蓄積などに関する診断テストを受けてくれています。私たちの本が、本当にたくさんの人の役に立っているのだと感じています。

アンドリュー・スコット/ロンドン・ビジネススクール経済学教授、前副学長。オックスフォード大学を構成するオール・ソウルズ・カレッジのフェローであり、かつ欧州の主要な研究機関であるCEPRのフェローも務める。2005年より、モーリシャス共和国大統領の経済アドバイザー。財政政策、債務マネジメント、金融政策、資産市場とリスクシェアリング、開放経済、動学モデルなど、マクロ経済に主要な関心を持つ(写真提供:リンダ・グラットン)

経済学者として、通常私は、世界経済やGDP、金利、為替相場などについてスピーチをします。ところが『ライフ・シフト』の話をすると、いつもとは別のことが起こります。スピーチのあと必ずといっていいほど、聴衆が私のところにやって来て、私に感謝の言葉を述べ、本書を読むことで人生が変わり、それまでとは違う行動をとるようになったというのです。身が引き締まるような刺激的な経験です。

――ジェーンのような人が人口の大部分を占めるようになったら、経済はどう変わるでしょうか。

ジェーンのような人、というのは、100歳以上まで生きる可能性が高く、教育―仕事―引退の3ステージではなく、マルチステージの人生を生きる人のことですね。当然、経済はそうした個人の生き方に適応するでしょう。

キャリアのスタートはより後になり、退職の時期も後ろ倒しになり、雇用慣行と規制はより柔軟で多様な働き方を支援するようになるでしょう。健康関連産業と教育システムも、新たな生活をサポートするために適応するでしょう。100年ライフを支えるための新しい産業が生まれ、既存の産業には新しい慣習が生まれます。

100年ライフはGDPを高める

20世紀、私たちの生き方が劇的に変わり、3ステージの人生が登場しました。平均余命は70歳になり、ティーンエージャー、退職者といった概念が生まれました。21世紀にも、同様の変化が起きるでしょう。GDPの成長は継続すると思いますが、私たちの経済へのかかわり方や、どのセクターが大きくなるか、といった点はシフトしていくでしょうね。

――100年ライフは、GDPに貢献するということですね。

私たちが長生きして長く働くなら、最終的にGDPにとってよいはずです。ですが、働く仕組みを調整できず、長生きするだけで長く働かない、ということになれば、GDPにとってプラスにならないだけでなく、年金や社会保障費が増えて、経済の重荷となるでしょう。

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