BMW「新型5シリーズ」が示す歴史的転換点 「物理的な原理しか信じなかった」車の変質
新型BMW5シリーズをいちはやくテストした小川フミオは、それが「従来のクルマづくりの頂点にして終着点である」という。
「駆けぬける歓び」をスローガンとするBMW
イット・カーがあるとしたら、僕にとってそれはBMW5シリーズだ。イット・カーは、イット・ガールやイット・バッグというのとおなじで、“これしかない”という旬なクルマのことである。僕は1972年に初代が出て以来、今日にいたるまで6つの世代の5シリーズをほぼ好いてきた。唯一の例外が2003年にデビューした5代目。米国人のデザイン・ディレクター、クリス・バングル指揮によるスタイリングは、BMWのセダンが本来持つスポーティ・エレガンスを欠いていた、と思うからだ。
さて、2016年12月にポルトガルはリスボンで対面した7世代目の新型5シリーズは、エレガンスとパワーをともに感じさせる内容で、僕にとってうれしい“再会”といえた。
試乗は欧州でもっとも長いといわれる全長17.2kmに及ぶ吊り橋、ヴァスコ・ダ・ガマ橋をわたるところからスタートした。今回は3リッター直列6気筒エンジンの「540i」と、同等の排気量を持つ3リッター直列6気筒(とはいえ、まったく違うエンジン)のディーゼルの「530d」をテストした。