「仕事と音楽」、2つの道を極めて見えたこと 可能性は無限と信じれば挑戦できる

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──会社人生での個人的な事情をここまで披露すると反響も大きいのでは。

自分のさらけ出し感が満載になってしまった。洋服を着ていないのではないかとさえ感じる。

私自身は走り回って時には転んだりしながら、一所懸命やってきただけなのだが、そこでどう判断してこういう選択をしたのか。仕事と音楽の活動の2つをやってきて、分かれ道でどう考えて、どう行動してきたのか。若い人にとって生きるうえでヒントになるかもしれない。

出会いの大切さ

小川 理子(おがわ みちこ)/1962年生まれ。3歳からピアノを始め、さまざまなジャンルの音楽に親しみ、慶応義塾大学理工学部在学中から、松下電器産業の音響研究所に憧れる。86年入社後、同研究所で数々の開発を手掛けたが、93年に所属する部署が解散。ジャズピアノでは2003年にCDが英国専門誌で年間ベストアルバムに(撮影:今井康一)

──しかも仕事と音楽の2つの道を極めていきます。

どこまでできるかは自分にはまったくわからなかった。人との出会いが大きい。大阪から東京に行ったら音楽仲間でも新しい人に出会え、米国ではすごい人たちとジャズを一緒に奏でさせてもらえた。会社の仕事は仕事でまた多様な経験ができ、学びと気づきがあって、分野が違うとそこにいる人のキャラクターも大いに違うことがよくわかった。

──出会いの大切さはこの本の通奏低音になっています。

不思議な出会いに満ちていた。大学の恩師には適性を見つめるすべを教えられたり、職場でも上司から貴重なアドバイスをもらえたり。

──入社時に念願の音響研究所に配属になります。

金管楽器型スピーカー、超薄型スピーカーといったユニークな製品を手掛けることができた。人を活性化し、個性を生かし、その強みを生かすという社風を満喫できた。これは創業者の経営理念の反映だと思う。「ものを作る前に人を作る」という考えを刷り込まれ、それを皆が大事に意識しながらやっている。まず研究所で、それから異動したネットワークサービスでも実感した。

──家庭ではおおらかに育てられたようですね。

教育熱心とは全然違う。これをしなさいと言われたことがない。自身でこれは面白い、やってみようという感じで、好奇心や関心から好きなことをやってきた。やらされ感がまったくなく、ピアノも楽しんで弾いてきたから続いたのかもしれない。

──3つ目の部署はCSR(企業の社会的責任)でした。

ここでもその部署でしか経験できない貴重な創業者の経営理念の実践ができた。社会的な課題を解決しながら価値を高めていく。企業の強みをどうやったら社会的価値に変換し「社会の公器」とすることができるかに腐心した。

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