「教育困難校」問題の解決には何が必要なのか

社会保障費の増大や治安の悪化を防ぐために

周囲に流されることなく、具体的な目標を立てる生徒だけが先に進むことができる(写真:Fast&Slow / PIXTA)

高校卒業後10年目、15年目といった節目に行われる、同窓会やクラス会を楽しみにしている読者の方もいるだろう。しかし、いわゆる「教育困難校」では、これらの会はほとんど行われない。高校卒業後、非常に不安定な生活を続け、連絡先が不明となる場合も多いし、こうした会を企画、実行する力を持っている人も少ない。数千円の参加費を捻出できない人もいる。そもそも、「高校生活を思い出したくもない」「会いたい人もいない」「愛校心などまったくない」という人が多数であることが現実だ。

そのため、教育困難校の教員は、自分が出会った生徒たちの卒業後の様子を知ることは困難である。個人的な信頼関係を結べた卒業生がいる場合のみ、その後の動静を知ることができるのだ。

筆者にも、個人的につながっている卒業生がいる。

本質をついた、鋭い質問を発した彼は

そのうちの1人は、現在、2児の父になり、夫婦で自動車整備士として働いている。高校時代の彼は、高校になぜいるのだろうと思わせる生徒だった。やんちゃな同級生と一緒にいながらも、彼らとは少し距離を置いており、友人が悪さをしようとするとなだめることも多かった。もちろん、学力は低かったが、授業中に騒ぐこともなく、逆に授業内容に興味が持てると、思いつくままに本質をついた鋭い質問を発した。

3年生になると、進路希望を自動車整備士になることと定め、学費の安い公立職業訓練校の受験を目指すようになった。信頼できる数学教員に過去問をもらい、相変わらず落ち着かない周囲に流されることなく、静かに勉強していた。筆者を気に入ったのか、よく雑談をしにきた。時には、やんちゃな友人を連れてきて、「先生、こいつ、先のことな~んも考えてねえの。何とかしてやってよ」という難題を持ってきたりもした。勉強のかいもあって、教育困難校といわれるレベルの高校から入学するのが難しい、公立職業訓練校に合格した。そこで学んでいる間も、たわいのない話をしに、時々高校に顔を見せに来た。

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