日本はマーケティングでも後れをとっている

発想力の大胆な更新が不可欠

──現段階は「マーケティング3.0」をいかに実践するか、ですか。

恩蔵 直人(おんぞう なおと)/1959年生まれ。早稲田大学商学部卒業後、同大大学院商学研究科へ進学。博士号(商学)取得。96年から現職。著書に『競争優位のブランド戦略』『マーケティング』『コモディティ化市場のマーケティング論理』など。フィリップ・コトラー氏、ケビン・レーン・ケラー氏の著作翻訳の多くを統括している。(撮影:今井康一)

年内に翻訳本を出す予定で、今ちょうどフィリップ・コトラー教授とケビン・レーン・ケラー教授の『マーケティング・マネジメント』の新版を手に入れたところだ。これは「マーケティング4.0」ともいうべきで、完全にデジタルがらみが主軸。まだ全部を読んではいないが、オールドメディアとおさらばすることになる。コミュニケーションは変わるし、ものづくり自体も消費者行動のとらえ方も違ってくる。その一方でビッグデータを生かすことになるから、予測内容もきっと異なってくる。そういったものがすべて盛り込まれる時代になるのではないか。

事例として私の本で、横浜DeNAベイスターズ前社長・池田純さんのマーケティング発想に基づいた戦略を紹介しているが、ビッグデータを使って新しいタイプのコミュニケーションを手掛け成功している。彼の発想は4.0的なマーケティングといっていいかもしれない。

「顧客の顧客」を見据える

──マーケティングでは「顧客の顧客」も大事とも。

マーケティングにおいて顧客を見るのはB2C製品では当たり前だった。流通や問屋を挟んでいるから、目先の顧客が立ちはだかってその先とは手を組めなかった。顧客の顧客、つまりB2Bに注目して新市場を“共創”した好例として、製氷冷蔵業でスタートし、ヒット製品のチキン骨付きもも肉の全自動脱骨ロボット「トリダス」を開発した前川製作所を特筆した。

さらに、「顧客のその先」と手を組むことで手術室を一変させ、病院運営ビジネスに一大変革をもたらしたセントラルユニがまさに示唆的。多くの関連企業の目を開かせれば、旧態依然とした業界が活性化することになる。

──核心は市場志向、現場志向の開発チームをどう作るか、ですか。

開発のチーム力は、要約していえば社会的凝集力(結束力)、組織的志向性(突進力)、集団的自律性(自治力)に絞られる。事例では、富士重工業の車種インプレッサの開発が一つの雛形を提供してくれる。主軸の技術者が2世代にわたり開発に携わっている。開発に従来なら4年近くかかるから、3代、4代と続けて手掛けることはなかった。インプレッサは3代目の教訓に学び4代目で大成功する。この技術者ヒアリングにはすごい価値があると思っている。

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