「ぺんてる」が高級シャーペンに秘めた超技術 価格は3000円!ノック不要の「オレンズネロ」
「新商品の開発はまず、オレンズを発売したときの大反響がきっかけになっています。年間計画が3カ月で売り切れたといえば、そのインパクトがおわかりいただけると思います。『折れない』ことへのニーズはこんなにあるんだと実感しました。それに、発売当時から『これで自動で芯が出てくるともっといいなぁ』という思いがありました」(丸山氏)
「細い芯径の場合、書き味が軽くてシャープな線が書けることがメリットです。しかし、芯の摩耗が大きいというデメリットがある。より太い芯、例えば0.5ミリの芯に比べ、ノックの回数が増えることになります」(同社シャープ企画開発部 シャープ開発課主任専門職 我孫子大慶〈あびこ・ひろよし〉氏)
つまり、業界一細い芯径は、根本的に「ノック回数が増える」という欠点をも併せ持つ。その欠点を補うために、芯出しの自動化というアイデアが生まれたわけだ。
「折れない」と「自動芯出し」を同時に実現
オレンズネロでは、第1に、芯の減り具合に合わせてペン先を守るための「パイプ」がスライドする「オレンズ」システムを搭載。これにより、極細の芯に圧力を加えても折れない仕組みが出来上がっている。
さらにもう1つ、紙面からパイプが離れると自動で芯が送り出される「自動芯出し機構」を組み合わせた。自動芯出し機能には、ペン先のパイプが紙から離れたタイミングで芯を送り出せるようにしつつ、ペン先に力を加えたときに芯がペンの中に戻らないよう制御する「ボールチャック」という技術が採用されている。この「芯を自動的に一方向に送り出す」システムにより、ワンノックで芯がなくなるまで書き続けることができるようになった。
ノックをしないで芯が出てくるシャーペンは、ある意味、究極形と言えるだろう。ではなぜ、これまで実現できなかったのか。
実は、ボールチャック技術そのものは30年以上前からあったのだという。
「製図機メーカーとのOEMにより開発した、自動製図機搭載のシャープペンシルに使われていた技術です。1985年に0.3ミリの芯径、1988年に0.2ミリの芯径のタイプが開発されています。ただ、その後パソコンによる製図が一般的になり、自動製図機は使われなくなりました。それに伴い、ボールチャック技術も長らく埋もれていたわけです。今回、ネロの機構にその技術を復活させたのです」(我孫子氏)
ボールチャック技術の復活にあたっては、すでに定年退職していた当時の担当者に教えを請うなど、苦労があったようだ。また、もともとは機械のための技術なので、人間用にアレンジする必要もあった。
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