どんなトレーニングをすべきか説明する前に、市民ランナーが「マラソン」を攻略するために覚えておくべきことから伝えたい。たとえば、「5時間30分切り」が目標だとする。東京マラソンでいえば、スタートを通過するのに、30分を要したとしても、制限時間(7時間)の1時間前にはフィニッシュできるタイムだ。5時間30分切りの平均ペースはキロ7分50秒になるが、このペースで走るのは難しい。その最大の理由は「遅すぎる」からだ。
終盤のペースダウンを心配するため、マジメにイーブンペースで臨むと、体力に余裕のある前半で脚が必要以上のダメージを受けてしまう。ゆっくり走るということは、ブレーキをかけて走ることになるからだ。太もも前の筋肉に張りが出て、ひざの痛みにつながることもある。それよりも、気持ちよく走れるスピードで進んだほうが、体へのダメージが少ない。
フルマラソンに臨むとき、多くのランナーは「距離」への対応を不安視している。そのせいか、マラソン本や雑誌などでは、「30キロ走をやりましょう!」という記事が目立つ。しかし、筆者は月間走行距離の少ないランナーにとって、30キロ走はあまり意味がないと思っている。
なぜなら、30キロ走をやったところで、「不安」しか残らないからだ。練習で30キロ走るのはかなりきつい。それなのにあと約12キロもある。「これで本番は走れるぞ!」とはならないだろう。なかには無理をして30キロを走り切り、脚を痛めた状態で本番を迎えてしまう人もいる。こうなると本末転倒だ。
そもそも数回の40キロ走をこなして、月間1000キロ以上を走る実業団ランナーでも30キロ以降は失速している。月間で150キロも走らないランナーが終盤までペースを維持するのは無謀だろう。終盤のペースダウン対策に取り組むよりも、25キロまでに「貯金」をつくる戦略をとったほうが“費用対効果”が高い。
平均ペースでいうとサブ3はキロ4分15秒、サブ3.5はキロ5分切り、サブ4はキロ5分40秒、サブ4.5はキロ6分20秒、サブ5はキロ7分ちょっと。これらを目標とするランナーにとって、そのスピードはさほど速くないはずだ。そう考えると、マラソンは「距離」ではなく、「スピード」での優位性を生かしたほうがいい。走っていて、「気持ちいいな」というペースがある。心拍数がそれほど上がらずに、それなりのスピードが出ているペースだ。腰高でストライドもそこそこ伸びている。そんな心地よいスピードで「距離」と「タイム」を稼ぐ。それが市民ランナーのマラソン攻略法だ。
本番をシミュレーションした練習をする
トレーニングも「レース戦略」に沿うかたちで行わないと意味がない。マラソンは大きくわけて3つの局面に分かれる。最初はスタートから約2キロまでの「ウォーミングアップ区間」、2つめは2~25キロまでの「イーブンペース区間」、最後は25キロ~ゴールまでの「ペースダウン区間」だ。これをトレーニングでカバーする。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら