完走者の3割未満、「サブ4」を達成するコツ マラソンはきつい練習がいいとは限らない

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マラソンに出場することが決まれば、徐々に走行距離を増やしていくが、ガッツリ走っていいのはレースの3週間前まで。残りはコンディショニングに重点を置く。そして、走り込みの時期にぜひ取り入れてほしいのが、2日連続で走る「セット練習」だ。フルタイムで働いている方でも土日を活用すればできるし、金曜日の夜と土曜日の朝に走るかたちでもいい。初日に脚を疲労させておいて、その張りが残るなか、2日目に12キロを走る練習だ。これはレースの30キロ以降をイメージしている。

初日のランも15~20キロで十分だが、サブ4を狙うならビルドアップ(=ペースを抑えて走り始め、徐々にペースアップしていくトレーニング)をするなど、少し追い込むくらいのスピードで行ってほしい。ただし、「セット練習」のメインは2日目。12キロをきれいに走ろう。想定すべきは、本番の30キロ以降なので、ペースではなくフォームを意識して、確実に走る。

負担の大きな30キロ走を行うよりも、「セット練習」のほうがダメージは少ない。さらにレース本番を意識できることを考えれば、どちらをやるべきかは明白だ。できれば、本番3週間前までに「セット練習」を2~3回やっておきたい。これで「ペースダウン区間」の対策はOKだ。

次はスタートから約2キロまでの「ウォーミングアップ区間」と2~25キロまでの「イーブンペース区間」のトレーニング。これは「コンディショニング」の時期に行う。筆者のお勧めはレースの10日前だが、平日になってしまうので、レース2週間前の土日でもいい。本番前に行う最後のポイント練習となる。

具体的に何を行うかというと、14~16キロのペース走だ。レース本番と同じように、簡単な準備運動だけで走りだして、徐々にペースを上げていく。そして、2キロからはキロ5分10秒をキープして走る。

本番への自信をつけるために、レースペースよりも1キロあたり10秒ほど速く走り、「まだまだ走れそう」というくらいで切り上げる。この刺激を入れておくことで、本番では楽に25キロまで走ることができるはずだ。

「セット練習」と「ペース走」は本番を意識して行うが、人間は一度“刺激”を与えることで、同じような刺激が来ても大丈夫なように、筋肉が勝手にパワーアップしてくれる「超回復」を期待したトレーニングでもある。あとは本番ではシミュレーションどおりの走りをするだけでいい。

「戦略」と「準備」が大切

市民ランナーは、「速く走る」のではなく、「走りをコントロールする」ことが、マラソン攻略のカギとなる。そして、スタートラインに立ったときには、“結果”の9割は決まっている。マラソンはビジネスと同じで、「戦略」と「準備」が大切なのだ。まだサブ4を達成していない方は、今回紹介したスタイルを試していただきたい。

酒井 政人 スポーツライター

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さかい まさと / Masato Sakai

東農大1年時に箱根駅伝10区出場。現在はスポーツライターとして陸上競技・ランニングを中心に執筆中。有限責任事業組合ゴールデンシューズの代表、ランニングクラブ〈Love Run Girls〉のGMも務めている。著書に『箱根駅伝 襷をつなぐドラマ』 (oneテーマ21) がある。

 

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