参議院は良くて無用、悪いと有害?

権力の集中と、その過度の抑制をどう考えるか

作られた多数、過剰な地方、本当の「民意」はどこに?

参議院の存在について考えるとき、まず参照すべき労作。本書からは、参議院議員が強い独自性を持ち、自民党の中でも参議院の同意をとりつけることが、いかに困難であったかがわかる。
竹中治堅著『参議院とは何か1947~2010』(2010年、中央公論新社)

事実、日本の参議院では、1989年まで自民党が衆議院と同様に多数を押さえていた。そのため、(実のところその運営が簡単なものでなかったとしても)参議院が独自の決定をすることは少なかった。

ところが、近年では小選挙区制で選ばれる衆議院に、はっきりとした多数派が出現しても、その多数派は参議院でなかなか安定的に多数を制することができていない。結果、両院の権限がほとんど同じなので、「ねじれ」が生じてしまう。

同じ「弱い二院制」の日本とイタリアは、ともに第一院で無理に非比例的な多数派を作るとの批判を受ける選挙制度を採っている。最近の衆議院総選挙が第一党に偏った結果なのは周知の通りだ。

イタリアの第一院では、第一党(政党連合)に最低でも全体の55%の議席を付与し、残り議席を第二党以下に比例的に配分している。たとえ第一党の得票率が40%に満たなくても、議席の過半数を占める政党が出現するのだ。

他方、両国の第二院では、第二党以下の政党が議席を獲得しやすい。日本の参議院には定数2以上の中選挙区と比例代表部分がある。イタリア上院では第一党に全体の55%の議席を与える前述の選挙制度を州ごとに適用するため、州ごとに異なる第一党が生まれることがある。

少規模な政党や地方への利益誘導を主張する議員が増えると、第一院で多数を占める政権党が、第二院では多数を確保しにくくなる。それだけでなく、政権党が、小規模な政党や地方への特殊な利益に対する妥協を余儀なくされ、一貫した政策に基づく政権運営が困難となってしまう。

第一院への権力集中による弊害を、第二院によって抑制するのはひとつの考え方だ。しかし第二院による過度の抑制は、第一院に権力を集中させる意義すら失わせることもある。バランスが重要だ、とは月並みな表現だが、比例制的な一院制にすることも含めて二院制のあり方を再検討すべき時期は近いだろう。

【初出:2013.6.29「週刊東洋経済(安倍政権の正体)」

 さて、ここまでの本文中でイタリアの選挙制度について触れたが、非常に短い説明であったため、具体的なイメージを持ちにくく感じた方が多いのではないかと思う。そこで、 イタリアと日本の二院制について、イタリアの2013年総選挙と日本の2013年参議院選挙に触れながら、もう少し補足していきたい。

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