権限の対称性と選出基盤、二つの議院に違いは必要か
第二院を設置する重要な意義は、権力分立を実現することである。これは第一院で過半数を占める政権政党に権力が集中するようなとき、たとえば小選挙区制のような勝者総取りになりやすい多数制の選挙制度の下で、特に重要な問題となる。
他方、比例代表制により、多数の政党の存在と連立政権が前提とされる議会では、そもそも権力集中の度合いが弱い。つまり、二院制というかたちで更なる権力分立を図る必要性は薄れる。実際、欧州諸国をはじめ、一院制を採る国々の多くは、比例代表制で議員を選出している。
それでは実際に創設される第二院は、どのような権限を持つのだろうか。全ての議案について、第一院と同様の議決が必要とすれば、両院の権限が対称ということになる。
ただし、完全に両院の権限が対称ということは稀だ。たとえば日本でも、首相指名や予算の議決、条約の承認には「衆議院の優越」が認められている。一部の事項については基本的に第一院のみの議決で議会の意思が定められ、その他の事項には第二院の議決が必要となる。何を第一院のみで審議するかは、多くの場合、憲法で定められている。
多くの事項で第二院でも審議を行うものの、その議決が第一院と対等に扱われない国もある。両院の議決が異なったとき、実質的に第一院の議決が優先されるのだ。このような場合、権限の非対称性は大きい。
権限の対称性と併せて考えるべきなのは、選出基盤が一致する度合いである。もちろん、完全に同じ選挙制度で選出される議院を二つ設立することは考えにくい。それでは二つの議院でいつも同じような議決となってしまうし、両者の優劣をつけることもできないからである。
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