公表されたばかりの大手自動車メーカーの2016年10-12月期の決算を見てみると、新車市場はすでにピークを過ぎた第1段階には達していて、これから利益が拡大から減少に向かう第2段階に突入しつつあるという兆候を読み取ることができます。ですから、米国の新車販売台数が減少に転じる第3段階は、2017年のうちに訪れるだろうと見るのが妥当なわけです。
次に、米国の住宅市場の動向についてみると、米国の住宅販売のおよそ9割を占める中古住宅の販売件数は、2010年7月の345万件を底にして、2016年11月の561万件まで右肩上がりの増加を続けてきています。住宅バブル時の勢いはないとしても、住宅の販売がここまで活況を呈しているのは、自動車と同じく、2016年以降にさらに進んだ原油安や低金利によって、米国民の購買力や購買意欲が引き続き高まっているからです。
住宅投資の伸びが止まる可能性が高まっている
ただし、これまでの住宅販売の回復を牽引している主要因は、金融緩和によって溢れている投資マネーであるという点には注意を払う必要があるでしょう。そもそも投資家の多くは、折からの低金利で運用に困った挙げ句、相対的に利回りが高い投資商品として住宅を買っています。とりわけ2016年は、ECB(欧州中央銀行)がマイナス金利を拡大し、日銀までもがマイナス金利を導入し、国債に代表される債券の運用では利回りの確保がいっそう難しくなったため、投資家による住宅への投資に拍車がかかっている状況にあるのです。
現状の中古住宅販売件数は、バブル最盛期の725万件と比べて70%台半ばまでしか戻っていないので、投資家の多くは「住宅市場にはまだ幾分の伸びしろがあるだろう」と考えているかもしれません。
ところがその一方で、住宅の重要指標である「ケース・シラー住宅価格指数」の動きを冷静に眺めてみると、そのような楽観的な考え方は成り立たないということがわかってしまいます。主要20都市の住宅価格指数は、2012年からバブル期並みの上昇基調を継続し、2016年10月時点で190.45と、2006年4月の最高値206.6に接近してきているのです。世界的に超低金利が長期化している副作用として、国内外の投資家が住宅投資へと傾斜してきたために、住宅価格はかなり割高になってしまっているわけです。
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