住宅の販売についても、同じことがいえます。米国では住宅投資はGDPの5%を占めているにすぎませんが、経済への波及効果が非常に大きいことで知られています。というのも、住宅が売れるということは、それに付随して家電製品や調度品、生活用品などの購入も増加し、米国ではGDPの7割を占める個人消費への波及効果が大きくなるからです。
おまけに、米国では住宅市場の9割が中古住宅であるため、住み替えのため住宅を売った家計は、必ずといっていいほど新しい住宅を買うことになります。消費の波及効果はもちろん、消費の速度も上がるという好循環を期待することができるのです。
米国の自動車市場に見る景気減速の「影」
では、今後も米国経済は好調なのでしょうか。確かに、米国における2016年の新車販売台数は、1755万台と7年連続の増加となり、2年連続で過去最高を更新しています。しかしながら、拙書『経済はこう動く』(2016年10月出版)でも指摘しているように、私は2017年の新車販売台数は減少する可能性が高いと考えています。それは、販売が減少する典型的なパターンが2016年の夏ごろからすでに表れてきているからです。
その典型的なパターンの行程を具体的に示すと、次のように「3段階」に分けて見ることができます。
第1段階 - 新車市場がピーク時に、メーカーはシェア維持のために安売りを始める。
第2段階 - 安売り競争の激化によって、メーカーの利益が減少する。
第3段階 - その後に、新車市場の販売減少が顕著になる。
2015年と2016年の新車市場で明らかに異なっていたのは、2015年は値引きをしないでも新車の売れ行きが良かったのですが、2016年はかなり値引きをしないと売れなくなっていたという点です。大手メーカーはディーラーへの販売奨励金を積み増して、需要の先食いをしてでも販売台数を増やそうとしていたのです。2016年の新車販売価格に対する販売奨励金の割合は、すべての大手メーカーで健全水準の境界とされる10%を優に超えていたというわけです。
その背景には、6年にもわたる新車市場の拡大を受けて、中古車市場への供給が増えすぎてしまっているという事情がありました。その結果として、中古車の価格が大幅に下がり、新車の需要が落ち込み始めていたのです。米国の新車市場ではたった1年のあいだに、構造的に需要と供給が逆転するという不健全な状態に陥ってしまったと見るべきでしょう。
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