しかし、今の形態の東電は、ゾンビ企業として、裏から入れた税金を返すだけの会社にすぎない。自由化になっても新しい展望が開けるわけではない。やはり、企業としての東電は法的整理で破綻処理をすべきだろう。株主や金融機関の責任をちゃんと追及して、経営陣も総退陣させ、新しく生まれ変わる必要がある。場合によっては地域ごとに分割したっていい。
また、廃炉をどうするか。これは東電に限らず、電力業界全体の問題として大きな絵を描かなくてはダメだ。国が原子力を引き受ける代わりに、送電網を売却させるぐらいの大きな転換を考えるべきではないか。将来は法的分離だと言っているが、すっぱり所有権分離をして、明確に発送電を分離する。いろんな企業が新規参入しても、利益相反がなく、市場で戦える状況を担保する必要がある。東電でさえ、事故を起こせばつぶれるという原子力発電事業を、民間企業がやっていくのは限界が見えてきたのではないか。
原子炉メーカーなどは、もうけは自分の懐で、事故が起きたら国民の懐から賠償金を支払う。そこはちゃんと製造物責任を適用すべき。必要なら保険に入ってもらう。そうした保険料も含めて原発のコストなんだと思う。
――東電を法的整理すれば金融市場など大混乱するという見方もある。
ゾンビ企業の東電には、すでに当事者能力はない
社債については一般担保の範囲内で保証されている。3月に銀行が無担保で緊急融資した分については、国は銀行独自の経営判断だと言っている。そこは銀行の経営陣が責任をお取りになるべきものだと思う。もし国が何らかの保証をしていたのなら、補償すべきだが、国は閣議決定で明確にそれを否定している。金融機関の屋台骨が揺らぐというのなら、公的資金を投入して経営責任を取っていただく。混乱を来す材料はないと思う。
――法的整理にすれば、被災者への賠償・除染費用の大半は国が負担することになる。
現状でも国が後ろから税金を入れて払っている。東電という仮面をかぶっているかかぶっていないかというだけだ。むしろ破綻処理をやれば、株主に対しては100%減資となり、金融機関への責任追及ができるので、その分、国民負担は減る。東電が生きていれば、東電が負担といっても、税金が支えているだけ。もしくは電力料金で利用者が払い続ける。
被災者の債権は国が守らざるをえない。時効を延ばす議論もしていかなくてはならない。東電に当事者能力がなく、被災地を復興しなくてはならないのだから、国の責任論うんぬんではない。
――財務省の抵抗が予想されるが。
財務省が抵抗するのはわかるが、それは政治の判断だ。(東電に)何十年もかけて返せといって、ゾンビ企業には優秀な人は残らない。
(撮影:尾形 文繁)
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